(2) 既存のアプリケーションがICカードに置き換わる分野
銀行キャッシュカードやクレジットカードなどの金融分野、交通・運輸分野として利用される有料道路における料金自動収受システム用の通行カードとか定期券とか汎用乗車券などがある。我が国の全国銀行協会連合会においては、キャッシュカードのICカード化を見越して、1988年に「ICカード標準作業仕様」を策定(1998年改定)している。全銀協仕様の中で、銀行が発行するICカードは多目的利用が可能で、標準業務、任意業務とともに、領域貸与業務として提携先向けアプリケーションを規定している。また、今後の銀行汎用ICカードとして本命視される「電子マネー」とキャッシュカードの一体化されたICカードの発行が始まろうとしている。さらに、VISAによるビザキャッシュと銀行キャッシュカード、NTT電子マネーと銀行キャッシュカードの一体化の発行も間もなく始ろうとしている。
一方、クレジットカードのICカード化は世界的な潮流であり、ICカードによるクレジットカードの発行が本格化するのも近い。
(3) 新たにICカードを利用したカードシステムが構築される分野
金融分野としての電子マネー、健康・医療分野における自治体医療カード、ID分野としての建設業界IDカード、放送・通信分野としての衛星放送加入者管理カードとか移動体通信SIMカードなどである。地上波の放送電波が届かない地域の多いアメリカでは、DSS(Digital Satellite System:デジタル衛星多チャンネル放送)が急速に普及したが、我が国でもDSSが持つ高機能、多機能性から新しいメディアチャネルとしての今後の発展が期待されている。これまで、ペイ・パー・ビューの課金やスクランブルキーの解除などはデコーダー内の処理にまかせていたが、今後はこの分野でのICカードの利用が進むものと予測される。つまり、ICカード内でスクランブル解除を行うことによる物理的な安全性の確保、ICカード内に加入者情報、視聴情報等を格納することによって電話回線を介した料金徴収が可能となるなど利便性の向上が図れるからである。
一方、移動体通信いわゆる携帯電話は、近年、急速に普及し、これとともに標準化の必要性が高まった。このため、ヨーロッパ域内では共通仕様であるGSM(Global System for Mobile communication)が登場し、これがヨーロッパ域内40ヵ国、その他域外諸国を含めると110ヵ国で採用され事実上の世界規格となっている。さらに、GSMにICカードが導入されるようになって、加入者管理、通信のスクランブル解除を行う必要から、多様なデータが保存できるSIM(Subscriber Identity Module:加入者識別素子)機能が採用されるようになったが、これをSIMカードと呼んでいる。