つまり、非接触型ICカードのリーダ・ライタには駆動装置が不要であり、精緻さが要求されるカードの位置合わせを行なう必要がない等により、設計・制作が容易である。このため、堅牢で安価な端末機器を製造でき、保守費用の削減が期待できる。
また、非接触型ICカードは、化学的な損傷、湿度や摩耗に強いので、長期の使用に耐えるため経費節減につながる。非接触型ICカードでは、CPUをカプセル化できるためICカードのセキュリティシステムを迂回できず機密性を確保できる。さらに、非接触型ICカードではカード表面をラベル用に使用できるため、複数企業あるいは複数のアプリケーションの多目的カード作成に有効である。
高速道路の料金所では、恒常的に振動や塵埃などによる悪環境下にある。このような状態では、精緻な位置合わせが必要な接触型ICカードでは運用が極めて困難である。しかし、非接触型ICカードはこうした環境に強く、また操作性に優れているため有利である。
このように、非接触型ICカードにはさまざまな利便性があげられるが、特に、交通、通信、IDカード、物流・FAなどの分野においてよりその有用性が生かせるものと期待される。たとえば、交通分野において、電子乗車券や定期券による自動改札システムは、現在、磁気カードが利用されているが、近い将来、非接触ICカードに移行し、これによって社会的なインフラとしても大きな影響を及ぼすことになろう。
図表3-2は、接触・非接触の2種類のICカードをプラットフォームとして見た場合、どうした適性を持つかを示したイメージである。なお、利用分野によっては、一枚のカードに両機能を併せ持つ複合カードの登場もありえる。
非接触型ICカードには、カードとリーダ・ライタ機器の距離によって密着型、近接型、近傍型があるが、これらの技術的特徴、標準化動向等については別の章に記載されている。