第2は、ICカードに記録されている各種情報の利用に当たっては、個人情報を保護する観点から適切なセキュリティ対策を講じることが必要となる。今後、ICカードの広域・多目的利用が普及するのに伴い、ICカードは、ネットワークシステムの構成要素として位置付けられるものと想定される。この時、ICカードやネットワークシステムを取り巻く脅威、即ち、
・悪意によるICカードの偽造
・情報を不正に読んだり、盗んだりする盗聴、漏洩
・本人であると偽ってシステムを悪用するなりすまし
・システムを不正に利用し情報を勝手に書き替える改竄
・情報を利用している事実とその内容が明白であるのに、利用していないと言い張る否認
などから各種情報を守ることが必要となる。
第3は、ICカードシステムの広域・多目的利用に当たっては、複数の組織が関与することが想定される。複数の組織が関与して事業を実施する時、ともすれば責任の所在が暖昧になりがちである。このため、システムの運用、管理組織の機能の明確化を図ることが必要となる。
これらの課題の対応策としては、先ず、住民基本台帳ネットワークシステム構想の早期実現により解決されるものと期待する。
次に、平成10年12月9日に「次世代ICカードシステム研究会(会長大山永昭東京工業大学教授)」が設立された。研究会の目的は、「公共分野のサービス提供者である関係省庁等との情報共有、意見交換を通じて、次世代ICカードシステムに求められる実効性・実用性の高い共通プラットフォームを検討すると共に、次世代ICカードシステムの普及推進を図る」こととしており、研究会の事業活動に期待するところ大である。なお、研究会は、平成12年3月31日にすべての事業活動を終了し、解散することとしている。
2-3-2 地域カードシステムの概要と住民基本台帳カードの考え方
(1) 地域カードシステムの概要
1] コミュニティ・ネットワーク構想の趣旨
自治省では、平成3年度から地方公共団体が積極的に地域情報化を図るために必要となる、先導的な地域情報通信システムの開発及び運用に関する事業を「地域情報ネットワーク整備構想(コミュニティ・ネットワーク構想)推進プロジェクト」として位置付け、積極的に支援を行ってきた。
具体的には、公共施設案内・予約システム、図書館情報ネットワークシステム及びICカードを用いた地域カードシステムについてプロジェクトを結成し、各プロジェクトごとに、全国共通に利用できるシステムを標準システムとして開発を行い、高品質かつ低価格の情報通信システムを、全国の地方公共団体へ普及するものである。