このように見ると、地方公共団体におけるICカードの利用は、携帯可能で安全な情報の記憶媒体というICカードの特性に負うところが大であった。ICカードは、住民の申請により地方公共団体が交付し、保健、医療、福祉などの情報をICカードに記録する。このICカードは、特定の地方公共団体内でのみ行政サービスを受けるのに利用されてきた。その後、1枚のICカードを用いて行政サービス(公的サービス)の外に、地元商店街などでのポイントサービス(民間サービス)などが受けられるように、多目的な利用が実現されるようになった。また、ICカードの利用範囲も近隣の地方公共団体まで拡大し、広域に利用されるようになり、今日に至っている。
一方、自治省は、平成10年3月に「住民基本台帳法の一部を改正する法律案」を国会に提出し、継続審議扱いとなっているが、この法律案によると、全国の市町村などを結合した住民基本台帳ネットワークシステムにおいて、ICカードは、本人確認用媒体として検討されている。このことから、ICカードは、今後の地方公共団体を取り巻く広域ネットワークにおける新たな利用法として期待されるものである。
(3) ICカード利用の課題
今後の地方公共団体におけるICカードの利用促進に係る課題について整理する。
第1は、ICカードシステムの標準化の必要性についてである。従来のICカードシステムは、特定の地方公共団体内に限定された利用であった。各団体でICカードシステムを開発、運用しても、それぞれの団体ごとにICカードの仕様やシステムが相違してるため、システムの相互利用は困難であった。このため、住民の利便性を高める観点から、どの団体においてもICカードが利用できるようにするためには、ICカードのアクセス方法やアクセス権限の設定基準、血液型、病名などの各種コードの体系、各種情報の記録方式及び外字の取扱い方式などについての標準化の取組みが必要となってくる。