(1) 高度情報通信社会推進に向けた基本方針
我が国の高度情報通信社会の構築に向けた施策を総合的に推進するため、平成6年8月に内閣総理大臣を本部長とする高度情報通信社会推進本部が閣議決定により設置され、平成7年2月には我が国の情報化推進の基本的な取り組みの方向が、「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」として同本部により決定された。
この基本方針は、我が国の社会経済のあらゆる分野において情報通信技術の活用により活力ある地域社会の形成や、ゆとりと豊かさを実感できる国民生活を実現しようとするものであり、情報化の推進に関して、政府としての方向付けを明確に示した画期的なものとみることができる。
この背景には、国際的あるいは民間企業の動向等を踏まえ、平成4年頃から特に公共分野の情報化促進の動きが強まり、これに対応して政府が各種情報化施策を推進する上で、その基本となる現状認識とそれに関連する対応方針を明確に整理しておく必要性があったことがあげられる。
この決定を一つの契機として、我が国の情報化は公共分野、産業分野を問わず着実に進展を見せつつあるが、ここ数年間のインターネットの全世界的な普及や電子商取引の本格化への機運など、策定時には想定されなかったスピードで大きな変化が生じつつある。例えば、平成7年のこの決定の中ではインターネットの活用や電子商取引、あるいはICカードの活用等についてもほとんど触れられていない。
このため、新たに生じてきた種々の政策課題への取り組み方を含めてこの決定を見直した新たな基本方針が平成10年11月に策定された。この新たな基本方針においては、情報通信技術の発展をもとに最近の情報化推進の課題とその対応方針がが各分野にわたって網羅されている。
特に新しく盛り込まれたICカードの活用についてみれば、公共分野の情報化のうち、保健・医療・福祉分野においてICカード等を活用したシステムの整備、普及による行政サービスの向上があげられており、また、公共輸送分野において、ワイヤレスICカードを活用した汎用電子乗車券の導入を促進し、公共交通機関の利便性の向上を図るものとされている。
なお、この基本方針は情報通信関連技術の急速な進展等に鑑み、遅くとも平成13年度(2001年度)末までには更に見直すこととされている。