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2-1-3 運輸・交通分野

 

(1) 非接触型ICカードの利便性と実用性

 

一般にICカードは接触型が馴染み深く、現在の利用状況をみても接触型が大半を占めている。しかし物理的な人や物の流れを対象とする運輸・交通分野ではデータ処理速度の速さが重要視されるため、非接触型の活用が不可欠である。非接触型の場合、機械に近づけるだけ、あるいはタイプによってはカバンやポケットから出すことなく、データの読み取りが可能であり、接触させるために必要な時間を削減することで、利用する側、利用させる側の双方のメリットが大きい。例えば電車を利用する場合、利用者としては

1] 通勤ラッシュで混雑するときでも改札通過がスピーディである

2] 乗り越し等の精算も自動的にICカードで処理される

3] ICカードを紛失しても届け出れば不正利用防止の処理の後、再発行もできる

など、非常に便利になる。一方、鉄道会社からしても

1] キセルを防止できる

2] 改札機メンテナンスの負荷を削減できる(非接触型であれば故障がほとんどない)

3] サービス/ロイヤリティの付加ができる(利用に応じて割引率を上げる、関連グループ企業のレジャー施設やレストランで利用できる多目的カード化等)

などメリットは多々あり、実用化は間違いなく有益である。

しかし、具体的導入までの課題も多い。

1] カードの発券管理や精算のために高性能コンピュータの開発が必要

2] 紛失したカードの不正使用を防止するために、紛失カードのID番号を各駅すべての改札機に情報として持たせる仕組みが必要

であるなど、コストが高くつく。また、

1] 乗り越し、乗り継ぎの精算のためには複数の鉄道会社間で規格統一・精算処理のコスト分担など取り決め事項が多く複雑である

2] 非接触型ICカードは接触型ICカードと比較して技術が安定していないため大量導入に慎重にならざるを得ない

などと言われており、メリットが大きくてもまだまだ障害は多い。このような状況の中でも当分野でのシステム開発は急ピッチで進められており、少しずつ実用化もされている。

 

 

 

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