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行政サービスインフラの電子化を実現し、利便性を向上させることで、市民のサービス享受方法に選択の幅が広がる。その結果、市民の能動的なサービス享受の姿勢を創り出し、サービスの提供をただ待っているのでなく、自らサービスを引き出すように変わっていく。すなわち、市民主導型行政を実現することになり、市民に有益であるだけでなく行政機関や自治体にも有益な結果をもたらすのである。

 

2-1-2 教育分野

 

(1) 学生個人の情報を分散管理するIDカードとしての利便性

 

大学、特に大規模な総合大学などでは

1] 学生の科目登録に伴う事務処理が膨大で、しかも短期間に集中するため負荷が高い

2] 学生数が多く、外国人も多く含まれる等から個人データの管理が困難

などの課題を抱えている。そういう経緯で浮上してくるのがICカード学生証である。学生一人一人の個人情報に加えて、学部・学科の選択や登録、試験の結果や資格の記録などをICカードに分散管理する。そうすることでホストコンピュータの処理負荷、管理負荷を軽減すると共に事務処理そのものの簡素化、効率化も可能とする。

学生にとっても煩わしい登録事務などの簡素化や、さらに多機能化を図ることにより学生生活全体の利便性が向上する。

 

(2) 多機能カード導入に最適な場としての大学

 

大学のIDカードという学生証は、身分を証明するものとして欠かせない。大学各施設の利用時やアクセス管理時、そして科目登録をはじめとする事務手続き時の提示など利用範囲が広い。磁気カードであればそれを機械に読み込ませることにより効率的な利用が可能である。そのカードを更にICカード化し、これらの管理や手続きの機能を持たせてしまうことで大学職員のマニュアル作業も大幅に削減でき、且つ学生にとっても便利になる。また、食堂利用、大学生協での買い物にもマネーとして利用できる金融決済業務機能を付加することでさらに便利になり、これに地域の小売店などとの提携でPOS機能を付加することでコミュニティ・カードとしての拡張も可能となる。

導入のしゃすさという観点から、学生はIDカードを頻繁に利用しているユーザーであり、カードという媒体を多機能に活用することに抵抗がない。すなわち、大学は多機能ICカードを導入しやすい環境でなのである。

それゆえ、大学はカード業界において金融機関をはじめカード開発メーカーなどの新規開拓先として魅力的な市場である。また、金融決済などで学生個人と契約関係を持つことになる金融機関などでは、高学歴で将来高収入が得られる潜在性を持つ学生を顧客として早いうちから引き寄せておくという戦略も立てられる。一方、大学側も多機能ICカードに関連する民間業者との提携により新たな収入源を確保できる。それぞれの立場からしても導入メリットは大きいのである。

 

 

 

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