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パスワード自体は解読されにくいが、盗難・紛失の場合にはICカードの再発行が必要になる。本人確認手段がない我が国において、再発行手続は困難である。また、カードに様々な情報が蓄積されている場合、情報の復元、再入力が必要となる。

本人がパスワードを忘れた場合の対策も確立されていなければならない。本人確認の上、パスワードをキャンセルして設定しなおすか、廃棄して再発行するか、オールマイティでパスワードを読める工夫を組み込んでおき、特定の者に限ってどのカードのパスワードでも解読できるようにしておくかである。

オールマイティの解読方法は、カードの再発行、情報の再入力は不要になるが、そのようなスーパーパワーを付与することの是非が特にプライバシー保護、人権の観点から問題になり、現実的な方法とは考えられない。いずれにしても、本人確認手続と併せ検討されなければならない課題である。

 

3. 個人情報保護のための方策

 

ICカードのサービスメニューが多く、便利であるということだけでは普及、定着することにはならない。多目的ICカードになるとサービス対象が拡大し、様々な個人情報へのアクセスが可能になるということから、今まで以上の個人情報保護方策が求められる。特に、日本においては行政機関の主導で統一番号を付与したり、カードを配付することに未だ抵抗感があることは否定できない。いわゆる、プライバシー問題として長い間タブー視されてきた問題である。このようなマイナス面を限りなく小さくしていくことが、普及、定着の鍵であることは間違いない。

個人情報の保護に関する法整備が進み、行政機関内における保護対策は確立されており、世に言ういわゆる、プライバシー問題の大半は既に方策が採られているのである。しかしながら、多目的ICカードの利用に伴うプライバシー論議に関し、次の4点については、無用な誤解を解き、必要な対策は講じるということが必要である。

 

1] 共通個人コード

 

多目的ICカードの場合、複数のアプリケーションにアクセスできる共通個人コードが必要になることから、30年前のいわゆる、国民総背番号に対する無用な論議、誤解を解く努力が必要である。

国民総背番号に対しては、番号で個人を管理することへの情緒的な反対と、国家統制に対する不安の2つの観点からの反対が根強く存在してきたことは確かである。

 

 

 

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