前者に関しては、すでに我々は行政機関に多くの個人情報を登録しており、それによって給付サービスを受けるという関係にあり、その個人情報は番号で「管理」されているのであり、根拠のない議論である。
後者は、個人の情報が統一番号の下に集積され、権力によって完全に管理され、個人の権利・利益が侵害されるということへの不安からいわれているものである。しかしながら、個人情報保護法が制定され、個人情報が行政機関内で自由に交換され、統合されるということがないことが保証されるに至り、この不安も根拠のないものということができるのである。ただし、多目的ICカード利用システムの1つと想定される住民基本台帳ネットワークによって、市町村、県、国の行政機関間で住民基本台帳情報を利用し合うということが実現するのであるから、このような不安に関して議論を公にし、誤解を解いていく必要がある。
2] 住民基本台帳ネットワークに伴う個人情報保護
住民基本台帳ネットワークによる住民情報の市町村間情報交換を実施するにあたって必要な法的措置を採るために、住民基本台帳法改正案が国会に上程されている。この改正案によって以下のような個人情報保護対策が講じられることとなる。
* 本人確認情報の保護、利用提供の制限:法律に規定する事務を行う場合を除き、本人確認情報を利用し、又は提供してはならない
* 住民票コードの告知要求制限:法律に規定する事務の遂行のため必要がある場合を除き、住民票コードを告知することを求めてはならない。
3] 民間における個人情報保護方策
国の行政機関における個人情報の収集、利用、提供等に関しては法的な規制がかけられ、個人情報の濫用による個人の権利・利益が侵害されるおそれはなくなったとして、残る問題は民間事業者が扱う個人情報である。
現行の個人情報保護法は民間事業者が保有し、利用する個人に関しては対象外としており、特定業界における個人情報の保護に関してはそれぞれ監督官庁による行政指導や業界による自主規制等に拠るしかない。それも民間事業者の自由なビジネス活動との兼ね合いという制約があろう。
住民基本台帳ネットワークにおいて本人確認の手段として付与される住民票コードが、これが民間事業者に利用されると、個人情報の集積のキーになり得る。これに対する不安は根強く、改正法案でも、公的部門以外の者が住民票コードの利用ができないように、権限のない者の住民票コードの利用を禁止しているのである。