日本財団 図書館


2. 行政サービス

 

ICカードを行政サービスの提供に利用する際、個々のサービス毎のICカードを複数枚所有し、サービス毎に異なる手続、操作が要求されるような事態は避けるべきである。行政と国民の関係において、国民が行政に対して然るべき情報を登録したり、申請したりすることによって、様々な給付サービスを受けるというのが一般的な形態であろう。ICカードを使用してこの登録、給付処理を容易にできることは、国民側だけではなく、行政側にとっても大きなメリットがある筈である。

国民にとって便利な登録、給付等に関連する主要な行政サービスは、国の機関だけではなく、県、市町村にもあり、これら行政サービスの多くが1枚のICカードで入手できることは便利であることは間違いない。一部県、市において、県民カードや市民カードを既に発行して行政サービスの授受に使用しているが、これらはその特定地域でしか利用できないという問題がある。これら特定地域カードが多く発行されないうちに、国レベルでのICカードによる行政サービス提供システムを構築する必要がある。

他の市町村、県、国等の他の行政機関にまたがって利用できるようなICカードとする場合には、発行主体、費用負担、IDコード等の標準化・リンケージ、管理責任、プライバシー保護、セキュリティ等、関係機関間の連携、調整がかなり大きな作業になると考えられるが、ネットワーク社会においてはこれら壁を超えてサービスが入手できるのであるし、それに対する要望も高いことから、行政側は早急に取組む必要がある。

 

3. 新しい行政サービス形態

 

ネットワークが社会活動、国民生活に普及、定着してきている現在、行政サービスの授受に関してはその便益を十分に享受しきれていない状況がある。今後、ネットワークを活用した新しい行政サービス形態である、ワンストップサービス(1個所で、複数の機関にまたがる行政サービスを完了させるサービス)、ノンストップサービス(自動交付機等による24時間サービス)、エニストップサービス(所掌事務以外の行政サービスの受け付け、交付等を行うサービス。)を実現する手段として、ICカードが活用されるべきである。

 

4. 民間サービスとの連携

 

ICカードの対象サービスを公的なものに限定するか、民間事業者のサービスを組み入れた多目的なものとするかは議論のあるところである。現在計画されている住民票カードは、全国レベルの行政サービスのためのICカードとしては唯一のものと考えられるが、利用範囲は行政機関内に厳しく限定されている。これは主として、個人情報の保護という観点から制限しているものである。例えば、住民基本台帳ネットワークにおいては、住民カードは行政機関内の利用にとどめ、民間事業者は住民票コードの提示を求めることも禁止されるというものとして計画されているのである。

しかしながら、ICカードで行政サービスを入手したときの手数料、実費、施設等利用料税、保険、罰金等各種納付が、その時点で自動的に支払うことができる仕組みがあれば極めて便利であり、行政側の労力も軽減されることになる。例えば、住民票の写しの自動交付機の場合、現在、手数料を現金で交付機に投入しているが、そのために行政機関側は適時、釣銭用のコインを補充したり、毎日現金の回収を行ったりする作業が必要になり、その管理、経理等に多くの労力がかかるといわれている。

現在、電子マネーの普及が進みつつあり、小額引落しのデビット・カードも立ち上がっている中で、これら決済システムをICカードに取り込むことが検討されるべきである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION