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そしてそれは「接続水域におけるパスポートコントロールを行ったり通関検査をするなど、出入国管理法令や関税関係法令を適用できるということ」ではなく、「接続水域内の外国船舶の徘徊を禁止したり、あるいは通関貨物の転載を禁止したりすることができるにとどまる」とし、その意味で「沿岸国の立法管轄は領域固有の法益を保護するものである限りにおいて認められる」とする。前掲(注10)論文、6頁。しかし認められないパスポートコントロールや通関検査と認められる徘徊禁止・転載禁止の間には立法管轄権に関する理論上の隙間があるように思われる。徘徊禁止あるいは転載禁止への違反があった場合にどのような法理によって、沿岸国法令のいかなる規定が適用されるのかを特定できなければ、それが拿捕・逮捕に繋がるのか、単に接続水域からの退去強制という形での排除に繋がるにすぎないかが不明確であるからである。それは山本教授がいう「それ以上の規制を行う場合」に沿岸国に課される「適法性の立証責任」の範囲の問題でもある。前出、注3、参照。

29 「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」3条2項。ただし田中教授は、各種薬物取締法の所持罪の規定およびその国外犯処罰規定に関して、排他的経済水域及び大陸棚における海洋構築物上での所持は、接続水域の場合と違って、「そこ(筆者注・海洋構築物上)での法益保護が国際法上認められているものであるから、これを処罰しそのために取り締まりを行うことは問題がない」としつつ、その国内法上の根拠は「3条2項の包括的規定ではなく、各規制薬物取締法の国外犯処罰規定」であるとしている。田中、前掲(注2)論文、24頁。刑法1条2項が「日本国外にある日本船舶又は航空機内」で行われた犯罪を国内犯として刑法を適用するとしているのと異なり、3条2項は海洋構築物上を国内とみなしてわが国の法令を適用するという包括的な規定となっており、「執行法・手続法のみならず実体法も全てこの規定によって域外適用することを内容とするもの」であり、「解決されなければならない問題が残されている」とされる(同前、17頁)。この記述の背景には、同法3条3項が「前2項の規定による我が国の法令の適用に関しては、当該法令が適用される水域が我が国の領海外であることその他当該水域における

 

 

 

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