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特別の事情を考慮して合理的に必要と認められる範囲内において、政令で、当該法律の適用関係の整理又は調整のため必要な事項を定めることができる」とされていることとの関係で、どの法令が適用されるかを含めて政令に委ねられていることに対する疑念があるのかも知れない。いずれにせよ国際法は海洋構築物について沿岸国が「通関上、財政上、保健上、安全上及び出入国管理上の法令に関する管轄権を含む排他的管轄権を有する」と定めるのみであり、いかなる法令を海洋構築物に適用することが合理的であるかは沿岸国が判断する問題である。そして我が国法令の適用上、国外犯処罰規定がなければ処罰できないとまで厳しく法令適用の条件を絞るべきであるかについては、必ずしもそうとも言えないような気もする。さりとて3条1項に列挙する法令だけで十分であるかどうか、列挙された法令について政令で適用関係の調整がなされていない場合に、裁判所がなお合理的に必要な範囲を何を基準にどこまで判断できるかについては、不明の部分も多く、問題が残されているのも事実である。

30 わが国裁判所は、法令の域外適用に関して、日本人が法令違反に問われている場合には、属人主義を適用して比較的柔軟に法令の適用範囲を解釈によって拡張しているように思われる。たとえば北島丸事件、第二の北島丸事件、ウタリ共同事件などにおいては、海域の「連接一体性」を一つの理由として漁業法の領海外での適用を一般的に認め、またテキサダ号事件においては、傍論ではあるが、たとえ衝突の場所が公海上であったとしても、日本人の水先案内人の過失についてはわが国裁判所が裁判権を行使できるとしている。これに加えて、外国人が係わる場合について執行当局が余りに慎重であることは、いわゆるレイノルズ事件(フェニックス号事件)において裁判所によっても「慎重を期して」といわれるほどである。執行当局の慎重さは裁判例の反映であり、裁判所による執行当局への批判はそのまま判例法理への批判として跳ね返る。わが国裁判所がもう少し柔軟にかつ客観的な基準をもとに、国内法令の解釈的な拡張を認める姿勢を示すことができれば、執行当局も国内法令のより実効的な執行を行うことが可能となり、接続水域制度の目的に沿った合理的な規制措置をとりうるのかもしれない。

 

 

 

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