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ばれている。自動車産業の場合、人手で運べない部品は殆どない。しかし、自動車の部品工場、組立工場の通路で、部品や道具を手で運ぶ人を見かけることは絶対にない。部品は運搬車かフォークリフトで纏めて運ぶ、道具は天井からぶら下げてある。

中小造船業・舶用工業の作業現場に、上述の考え方を持ち込む。

作業をする「ライン」のサイドに、部品を置く決められたスペース又は棚を設ける。部品は決まった位置、決まった順序にフォークリフトで配材する。クレーンによる運搬は二人作業になりがちだし、他の棟からの運搬の場合、積み替え作業が発生するから、フォークリフトに比べると数倍の工数が必要である。

 

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10kg以上の部品を扱う工程には、部品棚から取付位置迄の運搬に対し、マテハン専用の補力バランサーを使う。補力バランサーは、釣り下げ点を直接手で持って操作するから、押しボタンで遠隔操作するクレーン・ホイストに比べ、移動と位置決めに必要な時間が短くて済む。上図は補カバランサーの一例である。

道具は、全てラインサイド頭上に設けたレールから、スプリングバランサーでぶら下げる。これで、電磁石を使った板付け治具、引付け用の油圧工具のような、重くて使い難かったパワーツールも使えるようになる。数人の作業員が1台の工具を共用するような、誤った費用節減はしない。自動溶接機、半自動溶接機も、必要な台数を「ライン」サイドに常設し、スプリングバランサーで釣り下げる。更に、これらの溶接機を一人で複数台使用すると、生産性は大幅に上昇する。

中小造船業・舶用工業の現場の実体から推察すると、運搬のために歩行する時間と運搬に費やす労力をなくすだけで、数十%の生産性向上は確実に達成できる。更に、各作業場所に固定的に配置した、パワーツールと機械溶接の利用が進むと、同程度の生産性向上は充分に期待できる。これらの改善を確実に進めれば、屋内の小組立、大組立の場合、総工数が1/4以下に減少する程度の効果は問題なく期待可能である。

● 高級な自動化は不要

第三の手順、無人運転の行える自動化は将来像としても当分対象に上らない。たとえ、企業合同などによって生産ロット数が大きくなったとしても、自動化の対象として考えることのできる10000をこすロット数に達する部品を見つけることは困難である。無人運転のような高度な自動化を考えずとも、ライン化と機械化を徹底して行うことで、近隣諸国の低賃金に充分対抗できる、高い生産性は充分に達成できる。

 

 

 

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