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将来における設備を考えるとき、事業内容は専門化され、生産方式はロット生産に変革されていることを前提にするべきである。ロット生産の場合、作業改善の効果は、累積生産数の対数に比例して増大することが、習熟性工学として経験的に明らかにされている。設備投資の回収の見込みは立て易く、また実際にほぼ確実に回収される。当面必要な設備は、ロット生産に入るための第一ステップに必要な小額の設備である。高価な自動機械は不必要である。

● ライン化による改善効果の累積

設備近代化を考えるとき、生産性向上は、ライン化・機械化・自動化の3つの段階を経て達成されることを認識しなければならない。現在、中小造船業・舶用工業に、意識して作ったラインは殆ど存在しない。先ず、事業内容を専門化し、ロット生産に事業形態を変革する。工場に屋根を掛け、定盤を平滑に整備する設備投資を行い、同じ作業を同じ場所で繰り返す生産方式を確立する。

個別生産の場合は、屋根をかけても、雨で生産が乱されない程度の効果に止まる。ライン化を実施しても、開始直後は同程度の効果しか現れないかもしれない。しかし、同じ作業を同じ場所で行うことを繰り返すと、作業者自身、あるいは工場スタッフの工夫による、次のような改善の累積が期待できる。

1. 作業姿勢の楽な作業台を手作りする。

2. 電線を引きまわさなくて良い様に溶接機の置き場所を変える。

3. 手運びを最小にするためにフォークリフトの通路を確保する。

4. ……

即ち、同じ設備であるにも関わらず、個別生産のときに現れなかった、上述のような改善の累積という大きい効果を期待できる。工場の建築以外の投資は小額で済む。即ち、屋根のある平坦な定盤を整備した工場は、ライン化の条件を整える第一歩の設備となり、工場稼動後、改善効果は日を追う毎に累積され、加速度的に大きくなる。

ここで、機械駆動のコンベアラインのような、固定的な機械設備は、ライン化の条件ではない。当面、作業合間は、部品を手押し台車又はクレーンで移動することで差し支えない。作業が安定し、改善効果によって追加投資の原資が生み出されたときに、動力なしのローラーコンベアを追設するなど、段階的に改善を進めれば良い。

● 運搬と治工具の動力化

次の手順である機械化は、中小造船業・舶用工業の場合、運搬と治工具の動力化から開始すると良い。

「造船業は運搬業である」といわれる。そう言われるほど、作業に占める運搬の比重の高いことを表している。鋼板、ブロック、機械類等、人間が運べない重量物は、クレーンで運搬している。しかし、人間でも運べる小さい部品、道具類は、殆ど、人手で運

 

 

 

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