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る事が出来る。造船のように対象物が大きく重い場合ほど、ライン化によって機械化を可能にし、機械力利用による大きな生産性向上をねらう必要がある。

現在、日本の人件費は高く、量産されている汎用の機械は安い。作業員の遊びは大きな損失であるが、それに比べると機械の低稼働率による損失は小さい、機械の稼働率を高くするために作業者が機械を運びまわると、一般に、運ぶ作業者の人件費のほうが高くつく。それぞれの作業場所に、十分な台数の必要な機械を配置するべきである。

なお、造船業では、「NCガス切断機」「自動溶接機」などの使用を「自動化」と呼ぶが、これらの機械にはオペレーターがついているから、「機械化」と呼ぶべきである。

● 自動化は時機尚早

第三の手順、自動化は「オペレーターをなくす無人化」と言い換える事が出来る。自動化がうまく出来ていて、一人のオペレーターが複数台の機械を操作している場合、無人化の効果はさほど大きくない。無人化において、技術的に最も難しい課題は異常発生時の対策である。無人運転の可能な機械は、異常事態が発生したとき、それを確実に検知し、警報を発して、自動的に停止する機能を持っている必要がある。

この機能のない機械によって無人運転を行うと、異常のままに生産を続行し、大量の不良品を生産する事になる。生産期間の長い高価な部品の不良は膨大な損失を発生する。しかし、異常事態は、種類が多く原因も様々で、発生は予測しがたいから、検知手段も多種且つ多重に準備する必要がある、即ち、充分な異常検知機能を持つ自動機械を開発するためには、機械化のステップにおける長期にわたる運転の異常記録が必要になる。

自動化はこのように技術的に難しいにも関わらず、その効果は上述のようにさほど大きくはない。機械化の歴史の殆どない造船業において、この手順に入る事は、大手造船所を含み時機尚早である。

 

5.3.8 生産性向上の具体策

● 専門化とロット生産を前提に設備投資

最適な設備は、生産方式と製造工程に対応して定まる。異なった条件に幅広く適応できる欲張った設備は、不必要な機能を含む割高な設備になり経済性が悪い。また、設備投資は、主に作業の改善による人件費節減によって回収する。改善効果が小さいと設備投資回収の見込みが立たない。

個別生産方式を続けている中小造船業、舶用工業の計画する設備は、建造する船舶の船種・船型の違いに幅広く対応可能にしようとするから、融通性を持たせた複雑で高価な設備になりがちである。また、作業の繰り返しが少ないので、作業改善の効果が小さい。この二つの理由で、中小造船業・舶用工業では、投資回収の見通しが立て難く、設備投資に消極的であったといえよう。

 

 

 

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