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大括りの、即ち、大工程、小工程の粗さにおける観測を元に、相当つめた改善を行った場合においても、単位作業以下の細かい観測を行うと、大きな「ムダ」の存在に気がつくことが多い。造船業の生産性向上において、単位作業、更に要素作業レベルの細かい視点による分析は、盲点として残されている改善余地の発見につながる。

● 「ムダ」排除の具体例

「ムダ」を排除する改善案のヒントは、先ず、安全でいわれる「3S」にある。

1. 整理:必要なものと不要なものを選別し、不要なものを廃棄する。

2. 整頓:必要なものを決められた取り易い場所に置く。

3. しつけ:決められたルールとエチケットを必ず守る。

整理によって工場内にある品物を減らし、必要なものを整頓しておく棚などを製作し、整理整頓された状態を維持する努力を行う。即ち、「3S」を守ることは、運搬と物探しの減少に直結する。

次に、専用の作業台、治具、工具等の製作と使用、最適な作業の順序、方法、姿勢の選択など、作業を楽にやり易くする工夫をする。このとき、作業をよく知っている作業者の改善提案を大事にする。

ラインを組んで繰り返し生産を行っている工場では、作業員の使用する工具を、電動、ドライバーに至るまで、全て各作業員の手元近くにスプリングバランサーで釣り下げている。使う工具は作業位置近くの同じ位置にぶら下がっているから、探す「ムダ」はない。また、スプリングバランサーは、工具重量とバランスするバネの力で工具を引き上げているから、作業者は最小限の手の動きと最小限の力で工具を使うことが出来る。スプリングバランサーの一例を下図に示す。

造船業の溶接職及び鉄工職は、しばしば道具を探している。また、溶接用の長い電線を工場の片隅から力いっぱい引き寄せている。両者を比較するとき、造船の作業に如何に「ムダ」が多く含まれるか、この例だけでも明白である。どう改善すれば良いかも明白である。

作業員に万歩計を着用させて、作業時間中の歩行を計測したとき、何千歩も歩いているなら、その職場には「ムダ」が充満している。作業員の歩行を減らす工夫、即ち、空手の歩行、道具、部品を持っての歩行や物探しの歩行を減らす工夫の効果は大きい。なお、歩行を減らすために必要な設備は、通路確保、部品棚、作業台、スプリングバランサーなどで、その中には自作できるものも多い。設備費は小額で済む。

 

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