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作業者の高い知能レベルと長い熟練期間に蓄積した情報によって、適切に誤りの修正又は不足情報に対する補足が行われるからである。

今後、競争力強化のために、企業規模の拡大、複数企業の工程別分業によるロット数の拡大が必要になる。一つの製品は、多数の企業にまたがる多数の従業員の分業と協業によって生産される。このとき、曖昧な図面による問題発生の恐れがある。

工業製品の情報を伝達する言葉は図面である。多くの企業・多くの作業員の間で、正確な情報を伝達できるのは、統一された規則に従って作図された図面である。即ち、図面の表記法即ち作図法・略記記号の統一と、表記内容即ち部品の材質・形状の標準化は、ロット生産を成立させる土台である。

● 読み替えと修正の「ムダ」

曖昧な記述を含む図面は、熟練作業者の判断による読み替え、取付位置の修正、あるいは部品形状の修正等、本来不必要な作業の発生する原因になっている。正確に計測されたことはないが、作業者は、再々本来の作業を中断し、対策を思考し、修正の手作業に時間を費やしていると推定される。

生産性向上を考えるとき、修正と補足のために費やされる、思考と作業の時間はムダである。生産性向上が進むほど、生産時間の中で、このムダの比率は大きくなる。機械部門のJIS製図規則及び部品標準のような、厳密な規格・標準の制定と遵守は、高い生産性実現のために不可欠な条件になる。

● ディジタル情報の交換は厳密な標準化・統一化が前提

図面の標準化・統一化を促すもう一つの重要な要因がある。将来、コンピュータと通信回線を利用する、ディジタル情報の交換は、ますます進行する。

知能レベルの低いコンピュータは、人間のような融通を利かせた処理が全くできない。一個所の約束違いによって、図面全体の判読が不能になることも起こる。また、表現する規則の違いをコンピュータに変換させることは期待出来ないから、情報を有効に利用するために、ディジタル情報を一度全て図面の形にプリントし、規則の違いは曖昧さを処理できる人間の画像認識能力によって修正し、再度、ディジタル情報、としてインプットする必要が生じる。

この場合、折角のディジタル情報交換の利点は大きく損なわれることになる。即ち、情報交換のディジタル化を実現するためには、図面規格の統一は不可欠な課題である。

 

 

 

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