日本財団 図書館


この選択肢における将来性のある方向は、この調査研究に提案されている新技術など、革新的な技術分野への進出である。リスクはあるが、成功すれば成果は大きい。例えば、メタンハイドレイトの事業化は、現状では採掘コストが高く実現し難い様に見える。しかし、地球環境の制約を考えるとき、既存エネルギーの消費に対する制約が強くなり、高率な炭素税の適用など、既存エネルギーの価格は数倍、数十倍に高騰する可能性がある。このとき、メタンハイドレイト利用など、新エネルギー関連の事業は、十分な余裕を持って経済的に成立する。

技術開発が完了に近づき、実際に企業化の段階になって参入しようとしても、知識と準備の不足のために、事業に乗り出すチャンスを逃すことになる。中小造船業・舶用工業の単独企業が開発作業に資本を提供し参加することは、中小企業の体力を越え無理であろう。しかし、企業のトップには、合同で勉強の機会を持ち、新しい技術開発の動向を敏感に読み取り、自社で企業化可能な分野を常に模索するような、新規事業開拓に対する積極性が要求される。

● 事業分野選択の自由を与える規制緩和

中小造船業・舶用工業の、取引先、技術者、技能者、敷地面積、施設設備、資金力などの経営資源と、立地条件、地域性などの事業環境は、個別の企業毎に大差があり、各々特徴を持っている。専門化と規模拡大を目指すとき、各企業に最適な選択は、きわめて広範囲に分布する。各企業は、各々、自主的な判断によって、最適な生産方式の改革を選択しなければならない。

一方、船舶の大型化は、船種・船型を問わない全体的な趨勢である。さらに、船舶の輸出を争えるとき、仕様は輸出先の事情に合わせる必要がある。日本の国内事情に合わせた諸規則の適用は、中小型船舶においても不合理な面もでてきている。

トン数・船舶サイズなどの建造規制は、中小造船業・舶用工業における経営の体質改善と輸出拡大による受注量確保の方策を制約するという一面を持っており、中でも小型船舶の建造をおこなっている各企業が自主的に行う、輸出船受注等、受注拡大の企業努力を制限する結果となっている。法に関係する事項であり本地域ビジョン策定で云々されるものではなく別の場で議論されるべきものであるが、現地調査等の中で造船所の意見としてしばしば聞かれたので敢えてここに記述した。

● 改革の具体例

今回、九州・沖縄地区の中小造船業・舶用工業の一部の事業場について、実態調査を行った。調査対象の事業場の大半は、現在の厳しい環境の中で、作業量を確保し、活発な生産活動を行っている。言うなれば地区中小造船業・舶用工業の中の優良事業場である。

これら、優良事業場に共通するところがある。即ち、各々自社の特長を生かす分割に専門化していることである。常に積極的に事業を開拓している優良事業場は、ここに提

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION