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次に、そのモデルについて、設計検討を徹底的に繰り返すリミットデザインを行い、機能と信頼性の向上並びに低コストを両立させる設計を行う。さらに、製造段階においては、繰り返し生産の利点である改善の蓄積によって、高い生産性を実現する。このようなプロセスに、事業体質を変革しなければならない。

● 繰り返し生産が当たり前の諸製造業

ここで、陸上品を生産している諸製造業と造船業との違いの中で、生産性に最も大きく影響する違いは生産方式である。陸上の製造業が行っているロット生産方式は、高い生産性を上げやすい。中小造船業・舶用工業は、依然、生産性の低い個別生産方式を行っている。そこからの脱却は、新分野の事業を成功に導く条件としても不可欠である。

● 規模のメリット追求、ロット数増大

繰り返し生産は、同じ製品を生産する間、改善が累積され、大きな生産性向上を達成できる。即ち、生産ロット数拡大の効果が大きい。規模のメリットである。しかし、現在、中小造船業・舶用工業は、一般に規模が小さい。しかも、1社で船舶・機械を完成させる自己完結型の業態を採っている。このままでは事業規模が小さいので、繰り返し生産に移行したとしても、ロット数が小さく十分な効果は期待できない。

● 企業大合同と専門別分業

将来に向かう「構造改善」の第一の選択肢は、企業合同による経営規模の拡大である。必要な規模を達成するために、地域全部の企業が合併し、新しい工業団地に移転する程度の、大規模な合併が必要であろう。この場合、当然、社内は、分業による専門化を行い、各部分の繰り返し生産量の拡大を図らねばならない。分業化によって専門化された工場の具体的なイメージを把握するために、次に一例を示す。「BK工場は船殻のブラケットだけを専門に製作する。但し、類似形状部品の生産であるから、コンベアを引き、大幅に自動化された工場である。」

● 専門別に特化した企業

企業合同の実現が諸般の情勢で実現できない場合、やむお得ぬ第三の選択肢は生産分野を狭く絞り込み、その分野におけるシェア拡大によって量を拡大する、専門化の経営方針である。上述の専門化された工場単位で独立する企業体ということになる。但し、限定された分野の生産になるから、どこかの企業に従属する関係になる場合が多い。第一の選択肢に比較すると、企業の競争力は弱い立場になる。

 

 

 

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