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このサイクルは、原理的には従来の火力発電や原子力発電と同じであり、1851年にランキンが確立したいわゆるランキンサイクルを基本としたサイクルである。

クローズドサイクルでは、これまでこのランキンサイクルについてのみ研究開発が行われてきた。ところが、最近、海洋温度差発電に関する新しいサイクルが発明され、海洋温度差発電も新しい研究開発の段階に入ったと考えられている。

日本の経済水域での海洋温度差エネルギーの総量は、試算によると1年間に1014kWhになる。これは石油に換算すると約86億トンに相当し、2000年に日本が必要とするエネルギーの約15倍に相当する。仮に、日本経済水域内の温度差エネルギーの1%を利用するとすると、年間8600万トンの石油を節約できることになる。

従来のライフサイクルアセスメント(LCA)により、自然エネルギーを利用する発電所は希薄なエネルギーを用いるため、発電所建設によるCO2排出がかなり大きいことが指摘されていた。一方、近年種々の高精度なLCAが提案され、建設時や運用時のCO2排出量のLCA手法による評価によって、改めて自然エネルギーの有用性が定量的に明らかにされている。

海洋温度差発電を含めた代替エネルギーの発電方式と石油など既存の発電方式のLCAを行い、自然エネルギーの中でも、特に水力発電とともに海洋温度差発電に利があることを示している。100MWの海洋温度差発電の場合、石炭火力発電の約1.5%、LNGの2.4%、太陽電池に対しても約10%と極めて僅かな排出量であることが確認されている。このような評価により、海洋温度差発電は、二酸化炭素削減を含めた地球温暖化対策の有力な解決策の一つとして従来以上に期待されている。

 

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図1 海洋温度差発電の原理(クローズドサイクル)

 

 

 

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