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5.2 「技術開発」

 

技術開発のテーマについては、現在の我々を取り巻く社会情勢を考慮して、主として地球環境保全に視点をおき、新しいエネルギー源とそのための機器の開発およびエネルギーの再回収機器の開発を重点的に選定し、世界的なニーズと潮流に対する船舶・海洋業界としての姿勢を示すこととした。

 

5.2.1 海洋温度差発電

佐賀大学が中心となって研究開発が進められており、その技術は国内及び海外で高く評価されている。現在、国際プロジェクトとしてインドにおいて1000kWの実証試験が進められているところである。国内においても、四面海洋に囲まれた沖縄地区で検討がなされようとしている。この技術は、かなり大きなプロジェクトであるが、要素技術に関してみれば中小造船業・舶用工業の技術が寄与できる分野を多く含んでいる。一方、海洋温度差発電で汲み上げる深層海水は、多くの付加価値(農業、漁業、食品、医療、冷熱など)を有しており、この深層海水の利用は新たな漁場の開発を可能とし、また海洋関連産業の需要創出にも繋がってくる。メガフロートとのリンクが有効であり、造船業・舶用工業の持つ総合的な技術力を生かすことが可能な巨大プロジェクトになり得る。

海洋の表層部の温海水と深層部の冷海水との間には約10〜25℃の温度差がある。この海洋に蓄えられた熱エネルギーを、電気エネルギーに変換する発電システムが海洋温度差発電である。

この発電方式には、オープンサイクルとクローズドサイクル、そしてこれらのサイクルを組みわせたハイブリッドサイクルの3つに大別される。オープンサイクルに関しては、米国のNELH(Natural Energy Laboratory of Hawaii)を中心に研究開発が行われ定格出力210kWの実証実験に成功している。しかし、クローズドサイクルを用いる方が経済的でより大きな出力の発電が可能であることが明らかとなり、近年では以下に述べるクローズドサイクルを用いた海洋温度差発電に関する研究開発の方が主流となっている。

図1に、クローズドサイクル方式を用いた基本的な海洋温度差発電システムを示す。主な構成機器は、蒸発器、凝縮器、タービン、発電機、ポンプからなる。これらの機器はパイプで連結され、作動流体としてアンモニアが封入されている。

作動流体は、液体の状態でポンプによって蒸発器に送られる。そこで、表層の温海水によって加熱され、蒸発し、蒸気となる。蒸気は、タービンを通過することによって、タービンと発電機を回転させて発電する。タービンを出た蒸気は、凝縮器で約600m〜1000mの深層より汲み上げられた冷海水によって冷却され、再び液体となる。この繰り返しを行うことで、化石燃料やウランを使用することなく海水で発電することができる。

 

 

 

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