3] プレジャーボート所有・使用者のモラル
放置艇問題は、マリーナ等の所定の保管・係留施設の絶対的不足によるところも大きいが、プレジャーボート所有・使用者のモラル欠如によるものも多い。
このことは、航行面についてもいえることで、海上保安白書では平成8年のプレジャーボート等の海難隻数は673隻、全要救助船舶数の36%に及び、事故の原因は、初歩的知識・技能の不足等、基本的遵守事項の欠如によるものが多いと指摘している。
プレジャーボートが自然や地域と共生し健全な海洋性レクレーション活動の一つとして、社会的にも認知されるためには、施設整備もさることながら、プレジャーボート所有・使用者の自覚とモラルの向上のための環境づくりが何よりも必要である。
(3) プレジャーボート市場の新たなる展開をめざして
1] 中小造船業・舶用工業界の対応
中小造船業や舶用工業の多くは臨海部に立地しており、既存の技術や施設能力からみて、プレジャーボート自体の製造・修理は勿論、現在課題となっているマリーナ等の係留・保管施設経営にも容易に対応できる業種であり、既に実施している企業もある。
「加藤造船」(熊本県天草郡姫戸町)の例
現在、造船業としての作業はしておらず、工場敷地を舟艇の保管場所として提供。工場敷地の水際に簡易型の乗降用係船施設と艇の揚げ降ろし用クレーン及び利用者のためのハウスを持つ。その他のサービスとしては、エンジンのオーバーホール程度で、レストハウスなどの付帯設備やサービス要員の配備などについては必要最小限に止めている。アクセス条件はさほど良くないが、保管料を廉価で押さえているため、比較的に保管隻数は多く、造船所の遊休地の有効活用が見られた。
この調査過程におけるアンケート調査の結果でもほぼ5割の中小造船業・舶用工業がマリーナ事業に何らかの関心を持っており、単なる保管・係留業務だけでなく、修理や受検代行さらには今後とも増大する廃船処理に関わる機能をも併せ持つ業態への進出が期待される。
2] 地方自治体の対応
プレジャーボートに関わる最大の課題は、放置艇対策といっても良い。
このため、国でもマリーナ等プレジャーボートの係留・保管施設の整備を促進する一方で、平成10年3月には3省庁合同によるプレジャーボート係留・保管対策の基本方針が示された。
3省庁合同による「プレジャーボート係留・保管対策に関する提言」
〔基本方針と主な施策〕
1. プレジャーボート活動に対する基本的な視点の確立