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(2) プレジャーボート市場の課題

近年のプレジャーボート市場の伸び悩みは、何よりも日本経済そのものの低迷によるところが大きいが、放置艇問題やプレジャーボート所有・利用者のモラルに起因するトラブル、さらには廃船処理の問題など需要に対する市場環境(地域社会が、それを適正に受け入れるための物的・質的条件)の整備が遅れていることも大きな課題といえよう。

1] 放置艇問題

平成8年の運輸省、水産庁、建設省3省庁の実態調査によれば、全国の水際線近傍で確認された20.8万隻のプレジャーボートのうち、13.8万隻(66.3%)が放置艇とされている。

これらの放置艇には、沈廃船による放置も含まれるが、そのほとんどが所定の場所以外の無許可係留によるものと思われる。

このような放置艇の増加は、マリーナ等の係留施設の絶対量が不足していることもあるが、5トン未満の船舶の登録制度や小型艇の保管制度が未整備であることや現行マリーナの保管料金の高さなどに加えて、プレジャーボート所有・利用者のモラルの問題が背景にある。

放置艇問題は単に海域や河川の不法使用ということだけでなく、沿岸部も含めた地域に環境悪化や交通傷害を引き起こすなど、地域住民とのトラブルも多く、適切な対応を欠けば、かつてのゴルフ場開発にも見られた社会的問題ともなりかねず、今後のプレジャーボート市場拡大の大きな制約条件となる可能性を孕んでいる。

2] マリーナ整備の遅れ

運輸省では、港湾整備計画の中で、平成12年には公民併せて18万隻分のマリーナと6万隻分のプレジャーボートスポットを整備する目標を掲げている。

しかし、平成6年から8年かけての全国のマリーナの整備状況をみると、公共マリーナは4カ所増の44カ所、第3セクター・マリーナも3カ所増の16カ所と公共・第3セクターでの新設はみられるものの民間マリーナはバブル経済崩壊後の景気後退の影響もあり、逆に3カ所減の381カ所となっている。((社)日本マリーナ・ビーチ協会調べ)

このような民間マリーナの不振は、今後のマリーナ整備目標の7割近くを民間サイドに期待していただけに、目標達成の見通しは極めてきびしい状況にあると言わざるを得ない。

このほかにも、建設省による河川マリーナも平成8年5月時点で5カ所(約900隻)が開設され、10河川(2000隻)の事業が進歩しており、水産庁によるフィッシャーリーナ整備も8漁港が供用開始、20港の整備が進められているが、増大するプレジャーボートへの対応、放置艇問題の解消には、なお不十分である。

 

 

 

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