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また、平成10年度から3ヶ年計画で、技術的に最も厳しい条件が要求される空港利用について、1km規模の模型上で実際に航空機を離発着させ、実証する予定である。また、平成11年度からはこれに並行して、移動式防災拠点としての活用方策についても検討を開始することとしている。

一方、小型の浮体需要としても、運輸省の平成10年度の補正予算において、耐震強化岸壁を補完する施設として、メガフロート技術の研究成果を活用し、東京湾(横浜港)、伊勢湾(名古屋港)、大阪湾(大阪港)において、震災時に移動式の係留施設等として機能する浮体式防災基地をパイロット事業として整備することとなった。

(1) 様々な用途

埋立等の他の海洋建設工法に比較して、浮体式海洋構造物のメリットは、以下のものが考えられる。

● 工期が短縮可能

● 移設、拡充、撤去が極めて容易

● 浮体上だけでなく、内部空間も活用可能

● 生態系など自然環境への影響が少ない

● 地震による影響が少ない

● 水深、海底土質の影響をほとんど受けない

● 潮位変動による影響がない

● 水深が大きくなるにしたがって従来工法より安価となる

● 静穏海域に設置する場合は防波堤が不要となりさらに安価となる

一方、浮体式海洋構造物の社会的ニーズとしては、今後陸上での立地が困難となることが予想される廃棄物処理施設、エネルギー施設、騒音等が問題となる空港施設、さらに、潮位影響や水深、海底土質を考慮して従来工法より明らかにコストセーブが可能と思われる社会資本が考えられる。

このような浮体式海洋構造物のメリットと地域のニーズを上手くマッチングさせ、各地から以下のような様々なアイデアが提案されている。

・ 伊万里港牧島地区では、住民提案・指導型で、現在500艇程確認されているプレジャーボートの不法係留を一掃すべく、1000艇が係留可能な浮体を活用したプレジャーボート基地が検討されており、さらに伊万里市が昨年から進めている黒沢記念館の誘致計画と相まって伊万里市の重要な開発計画の一翼を担うものと期待されている。

・ 有明海においては、有識者を中心に環有明海経済圏開発構想として、沿岸海域の有機的連携による経済活性化を目標に、浮体式の防災基地等を設置するアイデアが提案されている。

上記の様々なアイデアは、今後、具体的ニーズに基づく詳細なフィジビリティースタディーと資金調達や事業採算を含む制度的スキームの検討、そして他工法に比較した優位性等に整理を行い、アイデアの具体化が期待される。

 

 

 

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