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5.1 「経営多角化・新市場開拓」

 

九州・沖縄地区の中小造船業・舶用工業は、売上の大半を占める内航船、近海船、大型漁船の代替建造需要が低迷し、現在極めて厳しい経営環境下にある。

これは、荷主の用船料引き下げ要求の高まりと共同輸送や輸送の大ロット化などによる輸送効率の進展、石油元売会社の製品スワップ等による輸送活動そのものの削減など、内航物流の構造変化が主原因と考えられ、また、これに加え、規制緩和のための内航船腹事業の解消に係わる問題により、内航船の建造が手控えられ、受注の大幅な減少に直面し、短期的には極めて厳しい事態を迎え、この状況は中長期的に続くことが予測される。

このような事態を踏まえ、海運造船合理化審議会も、平成9年12月に中小造船業対策に関する補足意見書を発出し、対策の必要性を訴えた。この意見書のなかでも、中小造船業は、国内物流を支える内航船舶を的確に供給し、地域経済及び雇用に貢献することにより一定の役割を果たすことが期待され、対策の柱の一つとして新規需要の開拓が位置付けられ、地域の実情に応じた新規事業分野への進出の必要性が打ち出されている。

 

5.1.1 次世代海上輪送システム

内航船腹調整事業は、輸送需給の適正化と内航海運事業者の経営安定、船舶の近代化等の推進という大きな役割を果たしてきたが、長期に亘る需給調整制度は、市場競争を阻害し、零細事業者の乱立を許し、相対的な物流コストの上昇を招いていることが指摘されている。これに対し、荷主は、その強い権限によって、一方的な用船料の引き下げを行いはじめており、内航輸送事業者は、先行き不透明な経済環境の中で新造船などの代替建造意欲は極めて低迷している。

この状況を突破するには、内航業界の経済構造の改革を進めることが最も必要なことであるが、船舶供給サイドからも代替船の建造需要を模索することが必要である。

(1) 高度自動化船による低コスト輸送

運輸省は平成11年度に「モーダルシフト対応型次世代内航船導入のための環境整備に関する調査研究」を予算要求している。これは、既存の199トン型や499トン型の低速貨物輸送分野においても、海運からシャーシや大型タンク車等の陸上輸送へ逆モーダルシフトが発生している実態を踏まえ、内航の抱えるコスト構造上の問題を改善し、海上に貨物を戻すために、高度自動化船を用いた低コスト運航を実証しようとするものである。具体的には、高度自動化船の運航コストと搭載される航行支援機器と所要の当直船員数との関係、さらに船員の居住環境や労働負荷の関係等を実証試験によって明らかにし、高度自動化船導入に必要な基準の見直し等も同時に行うというものである。

 

 

 

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