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第5章 九州沖縄地区造船業・舶用工業の21世紀ビジョン

 

はじめに

 

最近の我が国経済は、不良債権による相次ぐ金融機関の経営破綻やアジア域の経済危機と政情不安等により、未曾有の大不況に陥っている。政府は、過去最大規模の「総合経済対策」を決定し、金融機関への大型公的資金の注入も行われる予定であるが、赤字財政は、今後長期に亘ることは確実である。

一方で、経済のグローバル化・ボーダレス化、特にアジアの追い上げは留まるところを知らず、中国においてもVLCCが建造されるようになるなど、我が国の産業の空洞化や雇用環境の変化が懸念される。地域においても従来の延長線上にある振興策は限界にあり、地域の産業構造の高度化を図るため経済波及効果の高い新たな需要の創出が求められている。

九州・沖縄地域は、沿岸部と多くの島嶼部に恵まれ、歴史的にも海洋依存度が高く、瀬戸内海や有明海に代表される比較的平穏な海洋環境をも有し、我が国の他の地域に比べ、造船・舶用工業にとって、高い活動ポテンシャルが期待される。

今回の調査は、造船業・舶用工業の振興と地域経済の活性化を念頭におき、10年後を視野においた中長期的なビジョンの策定を目標として、九州・沖縄地域の特性や企業間の有機的つながりを生かし、新たな市場の開拓と需要の創出ならびに技術の高度化・生産の効率化を図るべく実施されたものである。

本章で紹介するビジョンは、上記目標に沿い、委員会ならびに作業部会及び現地調査等であげられた幅広い意見に基づいて策定されたものである。

紹介されている様々な課題やテーマは、多岐に亘っており、これらを具現化するには、さらに本格的な調査研究を実施する必要があるが、本ビジョンがきっかけとなり、九州・沖縄地区の中小造船業・舶用工業が従来の体質から脱皮し、21世紀をリードする産業へさらに発展することを期待したい。

 

 

 

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