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る。そこから創意工夫が促進され、新たな船型の開発などにもつながってくるのではないだろうか。

雇用対策として、女性労働力の活用や外国人労働力があげられるが、そのような人材が進出し得る事業者側の積極的な職場環境の改善も不可欠であろう。

 

4.8 国際化

 

一部の造船所を除き、大半の中小造船所は輸出船の建造はしていない。一方、わが国の中小造船市場への外国造船所の参入もなかった。外国造船所の参入がない理由としては、納期、品質、信頼性、アフターメンテナンスなどの面で日本の船社に十分な評価を得られていないことがあげられよう。従って、ほとんどの中小造船所においては「国際化」という点での大きな問題は顕在化していない。しかし、韓国をはじめとする近隣諸国の建造能力は着実に向上している。わが国の造船所が海外の市場を開拓する前に近隣諸国からわが国への攻勢が先になされることも考えられる。また、国内船社も従来の造船所との緊密な関係を重要視するという考え方から採算性を最優先する方向に変わってきている。すなわち、必ずしも国内の造船所に引き合いを出すという保証はないということである。加えて、大きな課題は、わが国の中小造船所はこれまで輸出船の建造実績が少なく、国際的な商取引や競争に不慣れであることである。今後、これらの外国造船所との競争に打ち勝っていくためには徹底した合理化と生産性の向上によるコスト競争力で戦っていくのか、または高度な技術力を糧として戦っていくという二者択一しかない。

中小型船市場において、外国の船社が直接日本の造船所に発注するケースは建造資金や積荷保証等の関係でほとんどなく、商社経由の発注になる場合が多い。

対象国となる東アジア諸国の海運事情は中古船で間に合っていること、必要な場合は自国の造船所で建造が可能となってきていること、諸国間のボーダレス化の進行などにより近隣諸国の造船事情も変わってきていることを認識しておかなければならない。今後の経済発展で東アジア諸国の海運市場も活発化してくるであろうが、以上のような状況から日本の中小造船業がこれらの市場へ進出し、特殊仕様の船舶ならともかく、コンベンショナルな船舶を受注することは幾多の困難が予測される。

技術力の維持向上とともに、さらなるコスト競争力が問われることになってくるであろう。

内航船を国際分業により建造しようとする場合、大型船に比べ小型船の場合は輸送費や諸経費などに占める割合が高くなり一概にメリットがあるとは考えられない。

従って、造船所・舶用メーカ各社がより連携を緊密にし、グループを作って一括発注形式で部品等の調達をおこなうことが望ましい。また、部品も標準化を図り各社共通の形式にしたい。

資機材の海外調達においては、納期・品質面でのトラブルや契約方法や通関手続きなどのトラブルも起こりやすく、場合によっては建造工程に大きな影響を及ぼしかねない事態もあり得るので先方の設備能力、技術・技能の人的能力等について十分な事前調査をおこなっておくことと、安定調達ができるまでは細心の管理体制と技術的な指導が必要であろう。

 

 

 

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