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4.7 労働力の確保

 

女性の出生率は1.42に低下し、わが国の総人口は2007年をピークに減少しはじめる。労働人口は、すでに頂点に差し掛かっており2000年からは減少に転じる。

一方、高齢化はさらに進行し2010年には、人口の4人に1人が65歳以上の高齢者が占めることになるなど、企業にとって労働力の確保はますます厳しい状況になってくる。産業界全体の問題であり、雇用の流動化がますます激しくなっていく中で、造船業界が現在の平均年齢を維持することは勿論、労働力の確保さえ困難となってきていることは、高齢化による労働力の低下と技術の喪失という問題と併せて、経営の基盤をも揺るがしかねない極めて深刻な問題である。

従業員の年齢構成に関するアンケート調査の結果をみると、直接的に生産を支える現業従事者のうち、全従業員に占める50歳以上の割合は社内工37%、社外工38%であり10年以内にこれらの4割近い熟練者を確実に失うことになる。

造船業の中でも特に技能工は熟練を要する仕事であり且つ機械化や自動化ができにくい仕事である。最大の雇用問題は若手労働力の確保とともに彼等の技術をどのようにして後継者に伝承していけるかである。

若手労働者不足の要因としては、3Kイメージが強すぎる、他の産業に比べて作業環境が見劣りする、将来の展望が見えないなど客観的なものと、他の産業と比較して賃金が安い、年間就労時間が長い、休日日数が少ないなど雇用条件的なものと二つの面が考えられる。

労働力の確保については、次のような対応策と実施が必要である。

1. 労働集約型産業から技術集積型産業への変革

2. 近代化による生産性と収益性の向上

3. 事業者の積極的な意識改革

4. 高度な技能や技術の早期伝承

5. マルチメディアの活用による業務の情報化 CAD、CAM

6. ゆとり・豊かさを実感できる労働環境の整備

7. 労働条件の改善 労働時間や賃金体系の見直し、福利厚生の充実

8. 高齢者や女性でも働ける職場環境づくり

9. 地上での先行艤装化や治工具の軽量化

10. 造船・船・海洋に関する積極的なPR

業界全体として、造船・船・海洋に関することや、物つくりの興味・関心を喚起する様なことをもっと積極的にPRしていく必要がある。従業員の家族、地元の子供達に対する、進水式や完工前の船内の見学等を行っている造船所もあり、船や造船に関心を与える良い機会である。企業の総括的活力は、若い社員の豊富さがひとつの要因である。やる気あふれる若者や中堅社員の積極的確保と育成は極めて重要な戦略になると思われ

 

 

 

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