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4.6.2 設計業務のCAD化、情報化および標準化

● CADの効果は既存設計図の利用にあり

九州・沖縄地区の中小造船業・舶用工業の企業数は多く、且つ企業規模・得意とする船種は様々である。設計業務のCAD化は、相当進行しているところから、全く導入の計画もないところまで様々である。既にCADを軌道に乗せているところは良いが、今後CADの導入・活用を考える企業は、CADに何を期待するかをはっきりさせて取り掛かる必要がある。

現在、人工知能(コンピュータ)の知能レベルは大変に低いので、CADに自動設計を期待し、設計時間節減と資材費節減を目論んでも、ここ数十年の間効果の出る見込みはない。CADの効果は既存の設計を電子的な手段で有効に変形編集して活用するところにある。即ち、コンピュータ内に蓄積された、設計データベースの累積量増大に伴って効果は大きくなる。この効果を期待する使い方が大事である。

● 毎船違う設計ではCADの効果なし

既存のデータベースの活用による効果を期待するから、当然、同型船あるいは類似船の繰り返し受注という受注戦略を伴わないと、CADの効果はなかなか発揮できないことになる。コンピュータを使うCADだから、設計はコンピュータに任せておけばよく、個別に違った船種・船型を受注することに役立つという考えは、当面、実現不可能な過大な期待である。現在の人工知能のレベルは、あまり高くない現実を正確に認識しなければならない。

● インターネット利用は効果大きい

情報化の面について述べる。見積・会計等の計算、設計計算など、コンピュータの計算能力の活用は一つの側面である。ここにコンピュータを使用している中小造船業・舶用工業は多い。しかし、今後もっと大きな効果を期待できるコンピュータの用途がある。それは最近急激に普及しつつあるインターネットの利用であろう。利用の効果は次の二つの側面で期待できる。

1. 企業紹介、引き合い募集など情報の発信

2. 設計及び購入品に関する情報の交流

造船業以外の業界には、急速にインターネット利用が普及している。受注・購買・求人その他、企業活動に必要なあらゆる情報の収集において、インターネット利用の比重は高まるばかりである。現在、文字情報・図形(画像)情報とも、伝達の迅速さと低コストにおいて、インターネットに勝る情報伝達手段はない。この手段を使わぬことそのものが合理化の遅れを示すといっても過言ではない。

 

 

 

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