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用した情報ネットワークを構築すればさらに貴重な「時間的資源」の活用が図れることになる。

コスト競争力の向上には設計の標準化や生産性の向上などが必要となるが具体的な提言は「第5章 構造改善」で詳しく述べることとする。

 

4.6.1 データの蓄積と原価管理のコンピュータ化

造船の場合、契約の時点では仕様書と基本設計図面しかなく全ての原価を把握することは無理である。むしろ不確定要素を多く抱えたまま契約と言うケースが殆どである。従って過去の建造船のデーターを基準に積み上げるより方法がないことになる。原価見積は収益管理、生産管理、工程管理など全ての指標になるので、その精粗は極めて重要なものである。中小造船所の場合は、このような管理部門を持つところは少なく他の業務との兼務業で行っている場合が多い。またコンピュータの導入も遅れており人手に頼らざるを得ない業務形態であるために原価見積に要する人的・時間的余裕がなく精度も粗いことが伺える。

また、竣工船の資機材購入実績、建造中の工程・工数等のフィードバックとフォローが曖昧なために基になるデータが不十分となり、且つ未整備であることが考えられる。過去の建造船のデーターが大まかなものであれば、コスト削減や生産管理は信憑性に欠けることになり、場合によっては工程の遅延やコスト面にリスクをはらむ可能性もあり得る。

見積時点での原価管理の精度に関するアンケート調査の結果では、80%以上の精度であると回答した造船所が59%で、製造原価の計算方法については部門ごとに正確に把握していると回答した造船所が24%であった。

過去の建造船のデーターを基準に積み上げるより方法がなくこのデータをいかに正確に収集し整理・分析できているかが精粗に影響することになる。原価見積は収益管理、生産管理、工程管理など全ての指標になるので、その精粗は極めて重要なものである。

契約が終わり、資機材の発注や実際の現場工事が始まった時点から物量や各工事単位の実績工数など生の諸データを管理部門あるいは担当者にフィードバックさせ、これらのデータを蓄積し管理していくことは、原価見積の精度を向上させることになる。造船の場合、購入資機材や部材点数が多く膨大なデータの管理を日課として行うことは大変な労力を要するのでコンピュータを活用した管理が必要になってくる。

アンケート調査結果によると、設計へのCAD導入率は造船所が32%、舶用工業が22%であった。CADの導入は最近数年の間に行われたもので今後とも普及率は伸びるものと思われる。管理部門のコンピュータ化が進むにつれ、仕様書や基本設計の初期データや詳細設計の終了した最終CADデータとの統合管理も可能となりより一層の原価見積管理の精度向上が期待できるものである。

従って、設計を含め生産管理、工程・納期管理、工数管理、品質管理、消耗材の在庫管理等の管理部門のコンピュータ化は必須の条件となってくる。

 

 

 

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