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4.6 コスト競争力

 

一般的にコストは市場原理に左右されるが、船舶の契約コストは海運市況にリンクしており市場価格により決まることが多い。

従来よりモーダルシフトの推進がおこなわれているところであるが、大きな施策ということもあってその主眼は物流の大動脈におかれている。各所に橋がかけられ交通基盤の整備が進展する中で、経済構造や産業構造の変化がおこっている。これらの変化に伴って船舶の需要そのものが変わってきている。海運界と中小造船所が一緒になってこのような状況の変化を調査する必要がある。中・四国を結ぶフェリーの例で見れば、橋のない所では頻繁に車の積み残しがおこっている。このような事例にもあるように、小動脈の部分にも結構内航船の生き残る道があるのではないかと思われる。

モーダルシフトにおいても海運業にとても大きな課題は高い船賃である。船賃が高くなっているのは何が原因なのか、あるいは何が高船価になっているのか船主と造船所が一体になって見直す必要がある。船主にとっても造船所にとってもコスト競争力という視点でみれば、船型がいかに立派で、少々速い船を造っても安い船賃に代わる効果はなかなか得られない。乗組員の数を縮小する方法や船の装備を徹底的に最小限にする方法などが考えられる。中小造船業がこれから活性化を図り生き残るためにはこのような方向での調査・研究も重要ではないかと思われる。今後おこるかもしれない諸外国の中小造船所とのコスト競走に打ち勝つためにも重要な課題である。

一方、造船所についてみれば、多くの他の業種とは異なり造船は大量生産が効かず一船ごとの受注産業である。個別受注による個別生産であるがゆえに造船所側からの適正なコストコントロールができにくい面がある。従ってこのような別の要因で船価の変動が起こっているということが多く、収益の安定性に欠ける。また、中小造船所の場合は、エンジンおよび周辺の補助機器、推進装置、甲板機械、航海計器等を舶用メーカーから購入し、船体そのものの建造や艤装品の取付工事が主たる作業であって、本来、この様な作業は、加工・組立工程において設備能力による生産コストの差こそあっても、付加価値を生み出しにくい体質を持っている。

コスト競争力といえば生産設備の機械化や自動化といったハード面での強化を連想できるが、中小造船所の場合、投資と効果と言う採算性を考えれば大手にあるような機械化や自動化は適切な方策とは言えない面が多い。

管理部門・設計部門のコンピュータ化、資機材や治具を探したり運んだりする際の時間的なムダの排除、舶用メーカー、鋼材の切断業者或いは設計会社などの事務的な情報交換に関するムダの排除、図面や製品の標準化や舶用メーカーから購入する舶用製品の標準化等々、個々の業務や作業を細かく観察し分析すればハード的な投資を行う前にソフト面での改善策がまだまだ残されており、このような比較的軽微でできる改善からコスト競争力をつけていくことを提言する。

地域或いは業界間の連携さらには舶用メーカーとの連携による経営資源(ヒト・モノ・金・情報)の有効活用を促進することにより、連携の手段としてマルチメディアを利

 

 

 

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