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4.5 生産性向上

 

4.5.1 生産方式の違いによる生産性の差

中小造船業・舶用工業は、少ないパイを奪い合うし烈な競争を続けており、低船価に耐えるコストダウンをぎりぎり行っているから、これ以上、生産性向上の余地はない様にいわれる。しかし、他の製造業で行っている生産性向上の方策を視野に入れると、中小造船業・舶用工業は、まだ合理化が遅れており、多くの可能性が残されている。

個別生産方式は、作業の繰り返しが少ないので改善を累積できず、基本的に生産性向上が難しい。中小造船業・舶用工業は、同じ生産方式の業界内競争であるから、個別生産による低い生産性の問題は顕在化していない。しかし、高い生産性を上げやすい繰り返し生産を行っている他業種と比較すると、生産性の低さが目立つ。

ここで、ヒアリング調査及び事業所実態調査によって知り得た改善事例の紹介、及び、繰り返し生産の利点を視野に入れた生産性向上の問題点と対策を述べる。

 

4.5.2 工場回転率向上の効果

九州中小造船業・舶用工業の代表的造船所に対して行った実態調査によると、いくつかの事業所において、全天候型、加工重量の大型化、運搬経路の短縮など、様々な効果を目論んで、建屋、定盤、及びクレーンを新設する設備改善を実施している。それらの工場は、設備投資効果を最大限に揚げるために、工場の回転率向上による生産量増大を目指している。そこで行われている改善策は、結果として、同じ作業を同じ場所で行う、繰り返し生産方式実現の効果を生み出している。

資金力がないので自動機械は入れられないと嘆く必要は毛頭ない。現在は、整備された屋内の工場において、出来るだけ同じ作業を同じ場所で繰り返し行う事に努力し、細かな改善を累積する事が最大の競争力強化につながる。建屋、定盤を新設又は整備した事業所は、競合他社とのコスト競争、あるいは大手の低い発注単価に耐えるカがあり、事業を継続発展させていることが、上述の効果を実証している。

 

4.5.3 狭い工場活用の意外な効果

機械化、自動化による生産性向上を計る以前に、小額の資金で大きな改善が可能な、「ムダ」排除に取り組むべきである。次にあげる「ムダ」に対する時間比率が大きい事は、中小造船業・舶用工業に限らず、造船関係の作業現場に大凡共通である。

1. 何も持たずに歩く。

2. 道具を持って歩く。

3. 物を探す。

4. 精度不良を修正する。

 

 

 

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