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双方の情報をインターネットや電子メールでリアルタイムで交換できるシステムを活用すれば、地域内造船所及び地場異業種の枠を越えて他の地域との有機的連携を可能とし連携の効果は更に上がってくるものと思われる。

市場原理の作用する民間企業の中で、相互信頼の上に基づく企業間連携が簡単に行えるとは考え難いが、部品メーカの方が分業化や連携による外部資源の有効利用が活発に行われており、むしろ連携が出来ていないのは造船所自身ではないだろうか。

中小造船業の場合は、設計から現場まで概して外注依存率が高く工場はアッセンブル作業が主体の場合が多く、そう言う視点で見ればどこも類似した作業を行っており企業間の連携はしやすい業界である。

連絡会や懇談会などをつくり双方の利害に深く関わりのない部分から少しづつ取り組みを重ねていけば、業界共通の問題点やなすべき課題が顕在化し解決の糸口も見えてくるのではないだろうか。要は、業界の経営者自身の意志決定にかかる課題である。

情報化については平成8年以来、企業間を結ぶ情報ネットワークの構築が提案されてきたが、「構造改善・近代化」の一施策として小規模ではあるが九州地区の小造船所を中心に大学や設計会社で構成された「造船情報ネットワーク連絡会(仮称)」が設立され、具体的なインフラの整備が推進される運びとなったところである。このような連絡会の参加メンバーがさらに増え、九州沖縄一円の造船所だけではなく、関連の業界との連携にまで発展することが望まれるところである。

 

4.4 技術力

 

技術開発を行い常に新しい技術や商品を保有することは製造業が生きていく上で必須の条件である。他の製造業においては、独自技術により意図的に新分野への事業展開を図り着実に売り上げを伸ばしている企業も多くあり、中小企業の間でも企業間の格差が拡大し二極化が進行しつつある。

かつて、造船業は日本経済を支える基幹産業であった。造船を中心として日本の産業界をリードし、これらに周辺の技術が加えられるようになってきた。

造船は多岐にわたる技術や技能の上に成り立っているにも関わらず早い時期に成熟産業となった経緯がある。これに比べて、自動車や家電製品など他の産業の発展がめざましく、産業構造の変化と共に、今となっては、中小造船所は基本的に技術開発力が弱いというのが特徴であるかのようになってしまった。

造船各社は新製品開発よりも、現在の延長線上でいかにコスト競争力を付けるかを追求し、生産効率の向上とコストダウンに総力が注がれており、特に中小の造船所においては技術の開発にはあまり目が向いていないのではないかと思われる。

要因としては、

1] ユーザー側の造船技術革新に対する意識変革が遅いこと

2] 造船所側のユーザー教育をおこなえるだけの技術力が不足していること

 

 

 

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