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4.3 連携

 

かつて、造船業は設備投資は少なく利益が大きい産業であった。故に、同業者による連携や他の産業との連携・共同研究などはあまり考慮されてこなかったきらいがある。内航船の造修需要の激減と競争の激化の渦中にあってもその形態はあまり変わっていない。主な要因としては、1] 経営トップの同業者への過剰な競争意識、2] 経営方針に係わる考え方に温度差があること、3] 資金力・技術力・設備能力の格差があることなどが考えられる。

造船・海運市場に活況がある時代なら、独自の路線による売上拡大、シェア拡大、企業の成長率を重視した経営でよかったが、中小企業を取り巻く経営環境の悪化はあまりにも根が深く企業単独はおろか一造船業界だけでは活路を見いだせない状況になってきた。中長期的にも内航船の需給バランスは供給過剰で推移する。これからは単に船の建造ができれば受注につながると言う状況ではなく、ニーズの要求はさらに多様化、高度化したものとなってくることは必至であり、これに対応できなければ新造船の受注は極めて困難になってくる。

仕事が来ればそれをやるという経営ではなく、付加価値を生み出せる経営をしていかなければならない。時代にマッチした新しい技術を効率的に開拓するには、顧客ニーズの情報が必要となるが、人的なネットワーク(連携)を組んでこれらの情報を交流すれば市場に評価されるテーマの選択と開発が可能となる。

人、モノ、金、技術、情報等の経営資源に限界のある中小企業が、単独でこれらの全ての資源を保有することは容易なことではない。めまぐるしく変化していく経営環境にスピーディーに且つ柔軟に対応していくためには、外部経営資源の有効活用、つまりアウトソーシングをフルに活用し経営基盤の強化を図っていく必要がある。

単に、同業種間のみの連携だけに止まるのではなく、大学・公設研究機関、大手造船所、異業種企業、さらには海運会社やオペレーター等、外部機関とのネットワークの形成は今後ますます重要となり、中小企業のポテンシャルをさらに高めてくれることになるであろう。

経営基盤の弱い中小造船所にとって「受注すること」や「コストダウン」が喫緊の課題であることを考えれば、むやみに過当競争で企業体力を消耗するやり方ではなく、連携による相乗効果で共同受注、共同調達、生産技術開発、市場開拓などメリットを生み出していくことも可能であり、また、設備の共用や稼働率の向上、固定費(コスト)削減など生産コストの低減に効果を生んでくれる有効かつ即効性のある手段である。すでに一部の造船所ではブロックの融通、大手造船所からのブロックの受注、一時的な余剰人員の他工場への派遣など実施されているが、操業調整や狭い加工場や組立定盤、ブロック置き場の不足などをリカバーするためにも、中小造船所間の設備の相互融通等はもっと促進すべきであろう。さらに、相互信頼に基づいた図面や生産情報の共有化や標準化の整備も必要となってくる。

 

 

 

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