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第4章 九州・沖縄地区造船業・舶用工業の発展課題と対策

 

4.1 経営基盤

 

造船業は多くの労働者を擁しローカルな地域の雇用や産業振興に大きく貢献できる産業であるが、一方で需要の山谷が激しい産業でもある。本来、造船業は個別生産の専業であるために業界を取り巻く経営環境の変化に対して対応力に乏しい体質を持っている。長期化の様相を示す景気の低迷、国際化、規制緩和等の進展に伴って市場環境が激変している。企業経営の仕組みが世の中の動きに合わなくなってきている。

加えて、高齢化や若手労働者の確保難など労働市場に係る問題が顕在化しつつある。

造船業の経営条件として、地理的条件、生産設備の規模や技術力、優れた労働力、情報化、資金力等があげられるが、時代の趨勢で今となってはどれをとってもみても条件を満足にクリアーできるものが少なくなってきている。中小型船を供給している長さ50m以上、1万総トン未満の造船設備能力が年約48万総トンであるのに対し、平成12年度における建造需要の見通しは、年34.5〜37.6万総トンとなっている。また概ね10年先においては、年22.6〜31.6万総トンとなるという見通しである。

短期的には約40%、中長期的にも約25%過剰になる見込みと予測されている。

経営者の意識の変革は、他の産業と比較して必ずしも十分とはいえず、むしろ、造船事業者の意識改革が一番遅れてしまっているのは、企業のトップが持つ問題意識や経営戦略によるところが大きい。需要と供給のアンバランスは、上述のように長期化の様相であり、中小造船業にとって好転は殆ど望めない状況である。自動車産業や金融業界などでもライバル企業同士が一緒になるというようなドラスティックな再編がある中で、特に中小造船所だけが一国一城の自己完結型を維持していくのはかなり難しい環境になってきており、このような再編について真剣に取り組んでいく必要があるのではないかと思われる。再編には大きな痛みを伴うが、そのようなことを模索していかなければ現状からの脱却は困難であろう。再編にとって、マルチメディアを活用した情報化というのは非常に重要な位置づけとなってくるであろうし、また情報化の推進によって連携はさらに促進されるものと考えられる。(「情報化」については第5章5.3.4参照)

国内受注競争の激化や国際化の波を迎え、中小造船業・舶用工業企業が存続し、さらに成長していくためには、1] 「新市場の開拓・経営の多角化」、2] 「技術開発」、3] 「構造改善」が必要になる。もう少し具体的に言えば、次の事項に取り組んでいかねばならない。

1. 「新規需要の創出」

2. 「技術開発力の強化」

3. 「技術および生産基盤の強化」

4. 「コスト競争力の強化」

 

 

 

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