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2.5 内航海運

 

2.5.1 内航海運の現状

内航海運の輸送特性は、大量性、低廉性を活用した鉄鋼、石油、セメント等の基礎素材物資分野の輸送が大半を占めており、その輸送量は経済の好不況等に大きく影響されるが、概して伸び悩みの状況にある。内航海運の輸送シェアは、トンベースでは8%であるがトンキロベースでは約44%であり、国内物流の大動脈を担っているところである。しかし、1975年後半からの産業構造が重厚長大から軽薄短小へと変化し、内航海運の輸送シェア(トンキロベース)はかつての50%台から低下傾向にある。九州は、昔から内航海運の発達が顕著であり現在も近畿、中国、四国方面等、西日本地区の物流を担っている。近年、トラック輸送道路混雑、環境問題等が深刻化するなかで、幹線貨物輸送の分野でトラックから効率的な大輸送機関である船舶や、鉄道へ転換する「モーダルシフト」の社会的要請が高まっており、内航海運の重要性が改めて認識されているところである。

貨物品目は、九州の産業構造の特色から、石灰石、セメント、鉄鋼等の素材生産部門の貨物が主要となっており、平成6年から8年の3年間の輸送料はおおむね横這で推移している。モーダルシフトに適した雑貨品等の貨物の輸送は、内航海運全体に占める割合は小さいものの、近年、高い増加率を示してきている。

内航海運は、事業者数の減少とともに事業規模の拡大が図られてきているが、全事業者の95%は中小企業である。

九州管内の内航海運事業者は、内航運送業者数170(対全国比22.9%)、内航船舶貸渡業者数719(同19.7%)となっている。資本金1千万円未満の事業者が内航運送業32%、内航船舶貸渡業で62%にも達し、また支配船腹量別でも2,000総トン未満の事業者が69%を占めており、全国に比して零細事業者の割合が多くなっている。

また、船腹需要が市場変動の影響を受けやすいこと、輸送サービスのストックが不可能であるため、供給調整面での機動性を欠き、船腹の需給ギャップが生じやすいという産業特性を有している。平成景気時には船腹需給が一時的に逼迫した時期もあったが、わが国を含む東アジア諸国の経済の急落、海上輸送量の減少、荷主の物流コスト削減の要請等で、内航海運はかつて無い極めて厳しい状況におかれており、今後の経済成長の予測からみて、船腹過剰の状況はしばらく続くものと思われる。

いまだ老朽船の割合は多いものの、船舶の近代化、大型化等による輸送効率の向上が進んでおり、港湾施設、荷役機器等の整備改善や情報システムの構築等により積載効率や船舶回転率の向上等が図られている。

一方、内航船員の高齢化は急速に進展しており小規模な事業者では、事業に対する魅力不足等から若年船員は減少の一途をたどり、後継者確保問題が深刻化している。

 

 

 

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