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2.4 海上物流と内航海運

 

2.4.1 アジアの産業構造の変化と海上物流

1980年半ば以降、わが国をめぐる経済環境の変化に伴い、外航海運は大きく構造変化してきた。その中でも、特にわが国外航海運にとって大きな影響を与えたものとして、85年のプラザ合意から始まる円高の動きと、安価で良質な労働力を背景としたわが国を取り巻くアジア諸国の急速な経済成長がある。

この二つの動きにより、わが国外航海運、とりわけ定期航路を担う国際コンテナ輸送の分野は大きな構造転換を余儀なくされ、また、国際不定期輸送の分野においても、荷主の物流コスト削減などの要請等を受け合理化が必須の状況となっている。

 

2.4.2 アジアをめぐる貿易の拡大と海運市場の拡大

1990年代に入ってからもアジア諸国は高い経済成長を続け、対米、対EUおよびアジア諸国間貿易貿易量も増加し、アジアをめぐる巨大な海運市場が生まれた。

特に、日本およびアジア諸国の主要貿易品目である自動車部品、電気製品、食料品、繊維製品、雑貨等の輸送を担う海上コンテナ輸送がアジア/北米間、アジア/欧州間及びアジア域内航路において大きな発展を遂げてきた。アジア諸国のコンテナ取扱量は今や世界の約4割を占めるに至っており、コンテナ取扱量上位5港のうち4港はアジア諸国の港湾である。特に華南を中心とした経済発展を背景とした中国のコンテナ取扱量増加率は30%を越えており、今後とも大きな伸びが予想される。

この様なアジアをめぐる国際コンテナ輸送の拡大とともに、安価な労働力に基づいた低運賃と増大するそれぞれの諸国の自国発着貨物、近隣諸国間へのアクセスの優位性を背景として、中国、台湾、韓国、シンガポール等のアジア諸国に拠点を有するコンテナ船社が躍進し続けている。95年末現在では、国際定期コンテナ輸送を行っているコンテナ船社のうち、船腹量では上位20社中7社がアジアに拠点を有する船社である。この様な低運賃を武器としたアジア船社の躍進により国際コンテナ輸送を中心に、シェア拡大に向け熾烈な国際競争が繰り広げられており輸出輸入ともに日本の船社に影響を及ぼしてきている。

 

 

 

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