日本財団 図書館


2.2 業界を取り巻く環境の変化

 

しかし、中小造船業・舶用工業を取り巻く経営環境は、漁業規制の強化はもとより、昨今の景気の低迷、金融機関の破綻や動揺、国内輸送構造の変化、船腹過剰と船腹調整制度廃止問題、内航船建造需要の大幅減少、受注競争の激化と船価の下落、収益率の悪化など、業界にとってその厳しさは過去の不況時でも例を見ない極めて厳しい状況になってきている。

加えて、少子高齢化、若手労働者の不足も顕在化しており、造船・舶用工業を問わず中小企業は経営の存続にも影響しかねない深刻な問題に直面している。

船腹過剰は今後とも適正な調整が必要であることには変わりはないが、これからの造船所に要求されることは、船舶の大型化・高速化・高度化・多様化等である。すなわち、量より質の向上が要求される時代になっている。

このような業界を取り巻く環境は明らかに変化してきているが、中小造船所における経営体質、技術力、設備の近代化という観点ではそれほど変わっているとは思われず、立地条件においても大半の造船所は拡張の余地がなくなってきている。

かつて、建造効率の向上と雇用の安定的な確保を求めて、大手造船所が新しい場所に工場を開拓してきた様に、中小造船所も21世紀に向けニーズの変化に対応できる設備の集約化と近代化を図って行く時代にきているのかもしれない。

 

2.3 アジア諸国の経済構造の変化

 

1970年代の韓国・台湾・シンガポール・香港に始まり、1990年代のベトナム・カンボジア・中国に至るまで、過去20年間におけるアジア諸国は異状とも思われるほどの高い経済成長を続け、各産業は、先進諸国の直接投資や安価で豊富な労働力を基盤として、加速的な発展を遂げてきた。

これに伴い各国の国内市場の発展はもとより、アジア域内の貿易、アジアを拠点とした対米・対EU諸国の貿易もめざましく拡大し、アジア諸国のコンテナ取扱量は世界の約4割を占めるに至り、アジアをめぐる巨大な海運市場が生まれている。

しかし、急勾配で成長してきたバブル経済も、1998年以降は「為替変動」に端を発した通貨危機や金融問題で各種産業の急激な生産量の低下を招き、復調の兆しすら見えない状況になっている。この様な経済の構造変化、輸出入貿易構造の変化、海上荷動量の変化が、わが国の海運業や造船業にも大きな影響を及ぼし未曾有の構造変化をもたらしている。

アジア地区における経済や産業の伸びは、短期的には低迷すると思われるが、13億人を擁する中国などを始めとするアジア諸国の人口増加や、それに伴う消費需要の増大、生産拠点の流動化等により、数年後は復活すると思われるので、21世紀に向かって2000年は、まさに一大転換期を迎えることになるであろう。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION