日本財団 図書館


第2章 九州・沖縄地区中小造船業・舶用工業を取り巻く環境

 

2.1 九州・沖縄の地域的な特性と動向

 

九州・沖縄の国土面積は全国(37.8万km2)の11.8%(内沖縄県は0.6%)を有し、人口は約1478万人で(内沖縄県は129万人)全国の11.7%を占める

九州・沖縄地区は、歴史的に海外文化、特に中国、韓国や東南アジア文化の玄関口として古くから交流の機能を果たしてきた。

国内においては、九州は農林水産地方資源型産業が発達し、とりわけ北部九州地区においては鉄鋼や化学の基礎素材型産業が栄え、近年では造船、自動車産業及び半導体産業などの企業の進出により、加工組立型工業の集積地としての進展がみられるところである。また、比較的に中大手造船所が多く立地している地域でもあり造船関連の労働者数は全国シェアで漸増傾向にある。

国際的には、東・東南アジアとの分業体系の成熟に伴って、沿岸主要都市間の交流が頻繁になっている。今後とも経済成長するであろう東・東南アジアでインフラの整備が進行し、需要が拡大することによって環日本海・黄海経済圏の貿易がさらに活発化することが予想される。そのような中で九州・沖縄地区はこれらの地域に最も近い距離にあるという立地的な優位性に加え労働供給力、労働コスト競争力を備えている。アジア指向が強まる中で、その中心がアジアNIESからASEAN、中国へと移行しており、貿易の主要な媒体である九州・沖縄地区の海運・造船業及び関連工業のビジネスチャンスも拡大し将来大いに期待できるところである。

九州は、わが国の1/3を占める長い海岸線(3.4万Km)と自然に恵まれた多くの良港を有しており、気象的に極めて多様性に富んでいる。

造船業・関連工業が全製造業に占める比率はさほど高くはないが、長崎、佐世保その他造船所の集中する地域においては、製品出荷額や雇用の面においてその比率は極めて大きく、同地区の重要な基幹産業となっており、経済的な貢献度は大きいものがある。また、永年の経験の中で築き上げてきた造船や舶用工業の技術は、他の製造業における「物つくり」の技術の向上にも波及的な影響を与え、当該地域の産業の発展に貢献してきている。

沖縄は、四面を資源豊かな外洋性の海に囲まれ大小多数の離島を有し、これらを結ぶ船舶の往来が頻繁である。また、いずれも観光地、リゾート地を多く有している地域である。

国内における鋼船建造量の九州運輸局管内のシェアは、1979年の20%前後から右肩上がりに伸びており、1997年には約35%になっている。

過去30年間に、日本の造船業は東から少しづつ西へ移ってきており、今後さらに発展の可能性を秘めた東アジア・東南アジアに近いこともあって、21世紀に向かって九州の海運・造船業のウエイトはますます大きくなっていくことが予想される。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION