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提案された船舶情報システムの技術要素が十分開発され、快適な通信環境を享受するための条件には、最も緊急な要件として情報の電子化が不可欠である。

このためにはルールブックや定型的資料のような静的情報と、時事刻々と変化し安全航海を維持確保するのに不可欠な動的情報に区分して考えると、静的情報は例えば電子図書や文例集のようにデータベース化して船陸で保持し、改正部分のみを情報交換して最新のデータに維持する。一方、動的情報は可能な限りオンライン情報としてデジタル信号をマルチメディアを介して送受信し、船舶運航の安全を確保する。

電子化に当たりテキストファイル的な形にするには非常に時間がかかるので、スキャナーで読み込んでそのまま画像データにしてしまう必要がある。

 

(2) 情報内容、量の変化

提案された情報通信システムが十分機能した場合、その利便性から船内においては何時でも、誰でも簡単に情報を得ることができるようになる。そのため「船位情報」の例で見られるように、利用される情報量は飛躍的に増加すると予想される。

船内情報設備としては、船内LAN、船内データベース、インターネット接続設備、データ処理システム、自動発受信システム等を備え、航海データ、機関データ等は常時モニターされ蓄積されると共に自動配信される。これにより電子化された船内定常情報は、自動的に関係先に送られることになり、乗組員の報告業務の大半が省力化され、その上、船舶の異常状態を陸上からも監視することができる。出入港情報や貨物輸送情報等の直近の情報でなければ有効でない情報は、船側からも積極的に取り込むことが可能となり、自動的に受信し貯蔵されるので、受信次第船内での対応が可能となる。

応急運用、緊急運用に当たっては、船内データベースに蓄えられたマニュアルやガイダンスを充実整備し、簡易な検索方法を備えれば、少人数での船内処理を可能とし関連する情報交信を減らせることになる。

また、移動体通信衛星インフラが整備されることにより、社会情報や娯楽情報の受信が陸上と同じ程度に可能になり、乗組員の生活環境が改善される。

 

5.2.3 通信インフラに依存する交信情報

以上、提案された船舶情報システムが完全に機能する前提で考察したが、船・陸間の情報通信インフラが「細い・不安定・高価」という貧弱な現状では、大きな情報は一朝一夕には送れない実状であるから、先ず手の届く範囲で対応し、それからインフラの向上した時点をターゲットとした抜本的な方策の二本立てとするのが現実的であろう。

当面は各種情報をCDにして、船の方ではCDからハードディスクに入れておく。そうすると、取扱説明書とかメンテナンスマニュアルとかパーツリストだとかを即座に引き出すことが出来る。データを更新した場合は共通のCDを授受するか、オンラインアクセスして差分をアップツーデートすることが考えられる。

また船内の動的情報については、可能な限り電子化して船内LANを活用し、情報交信の迅速化と省力化を図る。

通信インフラの向上、即ち太いパイプラインで安く、早く、正確さを有する船陸間の通信インフラが整備されれば、インターネットやマルチメディアを利用したストリーム型の情報交信が可能になる。

 

 

 

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