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5.2 船舶交信情報のまとめ

 

5.2.1 船舶交信情報の現状について

(1) 情報の内容及び量

平成9年度の「船舶運航支援情報」から始まった本調査は、10年度の「船舶の交信情報」として外航船舶における情報交信の状況についてまとめることができた。その情報は211項目にも及ぶ膨大なものであり、船陸間、船舶間の通信回数、時間数を全てを積算すると年間当たり19,000回、242時間にも達することが分かった。

このうち船舶の受信情報が回数で94.2%、時間数で87.4%となり、外部からの情報がほとんどを占めていることが分かる。受信情報の内では船位情報が15,263回、127時間、気象情報が750回、25時間であり、両者を合わせると16,013回、152時間となり、受信情報に占める割合は回数で83.9%、時間数で62.8%となる。

このことは、比較的早くからGPS等の船位情報システムが船舶に取り入れられ実用化されたこと、及び気象情報も確度が高くなり短波無線ファクスや衛星通信により送信され易くなったことによると考えられる。従来、船舶は自己完結型と言われてきたが、情報化の進展、通信媒体の開発と共に外部依存度が高くなり、その結果、正午位置測定に頼っていた船位が何時でも確認できるようになり、気象海象の予測が常時可能となってきた。これにより船舶運航の安全性は飛躍的に高められたが、常時得られる情報は高頻度で取得して確度を向上したくなるのが当然であり、情報量としては必然的に増大する。

最近の交信情報の質と量の変化の一つの要因として、国際船舶制度の導入に伴う船舶の少人数化と混乗化があり、ISMコードの導入に伴うSMS対応問題がある。これら制度の導入に伴い業務量は増加する傾向にあるが、あまりにも多すぎる情報の対応や処理に属人的判断を迫られ、乗組員の減少と共にオーバーロードになる傾向が問題である。

従って、現在の全ての情報の要否を判断し整理すると共に、全てに人間が対応せねばならないのかをチェックする必要がある。また将来的には高度化した機器により、入手情報を自動的に分類、整理、貯蔵する等により省力化を図らねばならない。

応急運用等の緊急情報に関しては、船舶の一生に有るか無いかのケースも含めて項目は列記してあるが、全通信頻度、時間から見ると非常に小さいものである。しかし、いったん非常事態が発生した際の交信では常に輻輳度が高く、船陸間において情報不足のため対応処理に遅延を来す等苦慮している。海上における遭難及び安全に関する世界的な制度(GMDSS:Global Maritime Distress and Safety System)は1999年2月から強制化され関係する機器や組織は整備されたが、遭難以前の緊急情報連絡に支障をきたさないよう通信のマルチチャンネルは維持されなければならない。

 

(2) 情報の重要性等

情報の重要性、緊急性、機密性については、現状の船内業務実施状況を基に乗組員の経験により仕分けされたものであり、船舶運航に関わる関係者との十分な摺り合わせは行われていない。

 

 

 

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