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(3) 更新情報の提供

航海用電子海図更新データは、平成10年9月25日より電子水路通報(航海用電子海図を最新のものに維持するための情報のみを含む)として(財)日本水路協会から、当面月1回の割合で毎月最終金曜日に、更新情報をCD-ROMに収録したもので発行されている。

それまでの更新情報は、印刷された水路通報により利用者に提供され、利用者自身で入力していたが、今回からは、航海用電子海図の更新情報をCD-ROMに記録し、ECDISにセットすれば電子海図の内容が自動的に更新できる。

更新情報はセル単位(セルは1枚の海図に相当し、セルに含まれるデータ量は5メガバイト以下であること。)で作製されており、ECDISの中で確実に情報の更新が行われるように、セル単位の通し番号が付与されている。通し番号は新刊後の第1回目の更新情報提供時に"001"となり、更新情報が発行される都度数字が増えていき、セルの情報が全面的に改版されると更新情報の通し番号が"001"から再度開始される。ECDISは途中の更新情報が抜けるとデータ更新を受付ないので、CD-ROMには一定期間まで遡って過去の更新情報も一緒に収録されている。

更新情報の記述方式は、補正データの記述を必要最小限にしてデータ通信による更新情報の提供が円滑に行えるよう、既存のデータを活かして補正する部分だけの限定したデータを提供することが可能なように設計されている。

なお、電子海図及び電子水路通報は最寄りの海図販売所で購入可能である。

 

(4) RCDS(ラスター海図表示システム)性能基準の作成

2002年7月1日発効予定のSOLAS条約(1974年の海上における人命の安全のための国際条約)第章「航行の安全」改正案では、紙海図及びECDIS(電子海図表示システム)で使用されるENC(航海用電子海図)は、船舶への備置義務が課される海図とすることになっており、日本を始め欧米先進諸国はIHOが定めたS-52、S-57等の基準に従い、ENCを精力的に作成している。

ところがNAV42(IMOの第42回航行安全小委員会)においてENCより性能や精度が劣るRCDS(ラスター海図表示システム)をENCが整備されるまでの間紙海図同等物とする提案が英国・オランダから出され問題が発生した。地図のグラフィックデータのデジタル化にはベクトル方式とラスター方式があるが、ベクトル方式によるENCの作成には高度の技術と多くの労力を必要とするが、スキャニングにより簡単に紙海図のイメージをそのままディスプレイ上に表示できるラスター方式を、特に英国は、全世界規模でRNC(航海用ラスター海図)の整備を進めており、RCDSの認否は関係諸国にとって重大な問題となる。その後審議が続けられたが、NAV44において世界的にENCの整備が局限されている現時点では、むしろ過度的な措置としてRCDSをECDISの1モードとしてECDIS性能基準の一部に取り込み、RCDSを認めた方がECDISの普及にとって好都合との判断がなされ、関係規則等の改正がMSC70(1998年11月)で採択された。

 

参考文献

・ 海と安全 第470号 特集「紙海図から電子海図へ」

船舶航行システムにも情報化時代の到来

(社)日本海難防止協会発行 平成10年3月25日

・ 大縮尺電子海図の刊行と最新維持情報の提供

(財)日本水路協会発行 季刊 水路 第106号Vol.27 No.2

海上保安庁水路部沿岸調査課

海図編集室長  菊地 眞一氏著

・ 海上保安新聞

(財)海上保安協会 平成10年9月24日、10月8日発行

・ IMO第44回航行安全小委員会に出席して

-水路業務とSOLAS条約-

(財)日本水路協会発行  季刊 水路 第107号Vol.27 No.3

海上保安庁水路部沿岸調査課

課長  八島 邦夫氏著

 

 

 

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