日本財団 図書館


4.3.3 電子海図最新維持データ管理

(1) 電子海図(Electronic Chart)

電子海図とは、現在の航海用海図(紙の上に印刷された海図)のデータをデジタル化しディスプレー上に表示させるシステムである。紙海図の情報に加え、レーダーやGPS等地の航海計器と組み合わせて自船の位置、進路等をディスプレー表示でき、予定進路の表示や航跡の確認、他船の動静等必要な各種の情報の重ね合わせ表示もでき、危険な水域に近づいた場合の警報機能も付加することができる。そのほか表示画面は拡大、縮小が可能であり、検索によって航路の名称、水深、灯台の種類、色、灯質、光達距離等詳しいデータも表示できる。

電子海図の中でも、IMOの性能基準に適合する表示システムが電子海図表示システム(ECDIS:Electronic Chart Display and Information System)に使用される海図データを航海用電子海図(ENC:Electronic Navigational Chart)と呼び、狭義の電子海図はENCを指す。

 

(2) 我が国における電子海図の現状

電子海図に関する国際基準は、「技術的基準の統一」を担当する国際水路機関(IHO:International Hydrographic Organization)と「法的強制力を持つ基準」を担当する国際海事機関(IMO:International Maritime Organization)とが相互に協力しながら、1988年より基準作りが進められてきた。

我が国においては、海上保安庁水路部が1992年(平成4年)4月より、電子海図提供体制の整備に着手し、平成8年度までに「IHOディジタル水路データ転送基準(S-57)2版」(1993年11月刊行)に従って編集した、沿岸航海に使用される北海道から沖縄にかけて日本沿岸海域を完全に包含した小縮尺紙海図データを4枚のCD-ROMに収録して刊行してきた〔E-7001東京湾至足摺岬・平成7年3月、E-7002北九州至石垣島・平成8年2月、E-7003瀬戸内海及対馬至佐渡海峡・平成8年3月、E-7004日本海北部及宗谷海峡至塩屋埼・平成9年2月刊行〕。他の国においても同基準に従って刊行されているが、各国の電子海図を比較すると、コード化方法の違い、属性の不足、測地系不一致等の電子海図作成仕様における解釈上の違いが明らかとなり、このために国際水路機関より平成8年11月に発行された「IHOディジタル水路データ転送基準(S-57)第3版」では、「電子海図製品仕様」が追加され、それに従って編集された航海用大縮尺電子海図E3011「東京湾」が平成10年3月に、第2版仕様で既刊の小縮尺図も改訂小縮尺図第1号として第3版のE3001「東京湾至足摺岬」が平成10年9月に刊行された。

日本沿岸海域は小縮尺図4枚でカバーできるが、残る3枚のうち「瀬戸内海及対馬至佐渡海峡」が平成11年12月に、他の2枚も平成12年末までに刊行予定となっている。

また、大縮尺図「伊勢湾」が平成11年1月に、大阪湾、瀬戸内海、関門海峡等7図が平成12年度末までに刊行予定である。

これら第3版仕様で刊行された電子海図は、最新維持方法の確立及び関係国際基準との整合等が図られ各国電子海図間の相違が少なくなり、「電子海図表示システム」の表示に支障ないものとなっている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION