一方、受注についても、上述の環境変化に伴い昨年秋以降大幅に落ち込んでいる。このため、安定的な経営上必要と考えられる約半年分の手持ち工事量の確保が非常に困難となっており、現在の操業度でいけば来春には新造船の手持工事がなくなるおそれがある。
2. 対策の基本的考え方
(1) 対策の必要性
中小造船業は、我が国経済社会において、国内物流を支える内航船舶を的確に供給し、地域 経済及び雇用に貢献することにより一定の役割を果たすことを期待されている。また、モーダルシフト等の国内物流改革を推進していくためには、中小造船業は、ユーザーニーズに的確に対応したより高度な船舶を供給できるよう活性化を図っていくことが必要である。
しかしながら、中小造船業を取り巻く環境、業況及び需要動向を勘案すると、事業者の自助努力では解決できない問題から派生した需要の激減により中小造船事業者の企業体カは著しく脆弱化していること、及び需要と供給の大幅な不均衡は極めて長期間継続する見通しであることから、このままでは産業基盤そのものを喪失するおそれがあるため、構造改善をはじめとする総合的な対策を早急かつ円滑に講ずる必要がある。
(2) 対策のあり方
中小造船業の専業度が高く、また、生産・経営規模が小さいことを踏まえ、中小造船業が今後とも活力ある産業として存続していくためには、
1] 中長期的な需要の変化に柔軟に対応できるよう、設備能力の削減、集約化等による生産鋭模の適正化を図ること、
2] 需要構造の変化、労働市場の変化等を視野に入れた造船技術力の向上、生産システムの効率化等による技術・生産基盤の強化を図ること、
3] 当面の需要の激減に対処するための新鋭需要の開拓及び雇用への影響を極力緩和するための雇用対策が必要である。
(3) 国の関与のあり方
今次対策は、基本的には中小造船事業者の自助努力を前提として実施すべきものである。すなわち、国は、市場原理を優先し行政の関与は必要最小限にするとの「行政関与の在り方に関する考え方」政び規制緩和等により競争力の向上と産業の活性化を図る造船政策に基づき、事業者の自主的対応の補完的支援と環境整備に必要な対策を講ずるべきである。
3. 対策の骨子
中小造船業が早期に不況を克服し、活力と競争力を保持するためには、以下に掲げる対策を総合的に実施する必要がある。なお、対策の具体化に当たっては、中小造船業の地域性を考慮し、各地域の実状に沿ったものとすべきである。
(1) 構造改善
(ア) 生産規模の適正化
需給不均衡を解消し、需要構造の変化に対応するため、設備能力の削減及び集約化により造船設備の再編成を行う。過剰設備能力の削減は、長期的に過剰となる20〜30%を、できる限り速やかに遅くとも平成12年度中までに原則として基数単位で処理することとする。