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しかも、需要の低迷は長期に亘ることが見込まれるため、このままでは産業基盤を喪失するおそれがある。また、内航船の建造需要の激減は、内航船向けの舶用機器を製造している舶用工業事業者の経営にも影響を及ぼしている。

しかしながら、中小造船業等は、地域経済及び雇用に貢献しているばかりでなく、今後のモーダルシフト等の国内物流改革を推進していくため、ユーザーニーズの変化に的確に対応した船舶を供給できるようその活性化を因っていく必要がある。

 したがって、中小造船業及びこれに関連する舶用工業が早期に厳しい事業環境を克服し、活力ある産業として存続していくため、別添の対策を講ずる必要がある。

 

別添 中小造船業及び関連舶用工業の対策

 

I. 中小造船業及び関連舶用工業を取り巻く環境と今後の見通し

我が国造船業において内航船、近海船(東南アジア等との運送に従事する数千トンクラスの貨物船)、大型漁船を主として供給している中小造船業は、物流構造の変化等により厳しい環境にある。すなわち、共同輸送や大ロット化等による物流の効率化、製品スワップ等による輸送回数の減少が図られるなどの内航物流の構造変化の進展により中小型船の需要構造が変化し、内航の過剰船腹が増加しつつあり、漁船需要の長期低迷などとあいまって、中小造船業を取り巻く環境は厳しさを増し、この傾向は中長期的に続くものと予想される。これに加え、規制緩和のための内航船腹調整事業の解消に係る問題により、内航船の建造が手控えられ、昨年秋以降受注の大幅な減少に直面し、短期的には極めて厳しい事態を迎えている。

今後の中小型船の需要は、現在の供給能力が48.4万総トンであるのに対し、今後平成9年から12年までの間は年平均22.6〜31.0万総トンとピーク時の約半分まで激減し、その後過剰船腹の解消等により回復に向かうものの、平成18年から22年までの間においても年平均34.5〜37.6万総トン程度に止まるものと見込まれる。

 

II. 中小造船業対策

 

1. 中小造船業の現状

(1) 中小造船業の特質

中小造船事業者(500総トン又は50mから10,000総トンの造船設備能力を有する中小企業)は、全国で約110事業者あり、社外工を含む従業員数は1社平均100人程度、また、年間総売上額は約3,000億円であるが、中国・四国・九州地域を中心に特定の地域に集積し、当該地域の製造業の中核的立場を占めている。

中小造船事業者は、新造船の総売上額に占める割合が85%、修繕を含めると95%と、専業度が非常に高い。また、85%の事業者の固定比率(固定資産/自己資本)が100%を超え、中小造船業は設備等の固定資産について借入金の多い構造となっている。

(2) 業況

中小造船業における対売上高営業利益率は、平成3年をピークに年々低下を続け、平成8年では昭和62年の不況時の水準に落ち込んでいる。

 

 

 

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