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資料3. 海運造船合理化審議会意見書「今後の造船業及び舶用工業のあり方について(中小造船業対策等)」(平成9年12月)

 

平成8年7月の補足意見書「今後の造船業及び舶用工業のあり方について」においては、国際競争の激化、高度情報化の進展、産業の空洞化、就業構造の変化、安全・環境問題に対する意識の高まり等我が国造船・舶用工業を取り巻く環境変化を踏まえ、産業基盤の整備、技術開発の推進及び国際協調の推進を柱とする造船・舶用工業の課題と対応策を提言した。

一方、その後の我が国造船・舶用工業の状況は、欧州及び米国の造船助成の継続及び拡充の動き、韓国の新鋭設備の本格稼働等による国際競争の一層の激化が進行しており、また、内航船の建造需要が急減し、しかも、中小造船業が主として供給している内航船、大型漁船等の需要は長期的にも低迷すると見込まれること等、事業環境が変化している。したがって、上記意見書の対策については、引き続き推進する必要があると考えるが、さらに、以下の事項について今後重点的に取り組む必要がある。

 

1. 高度情報化による業務革新

我が国造船・舶用工業は、中小造船業を除き旺盛な外航船需要に支えられ、堅調に受注を確保しているが、国際競争は一段と激化することが見込まれる。

欧州及び米国は、造船助成の拡充策を採るばかりでなく、MARISプロジェクト(欧州)、MARITECHプロジェクト(米国)のように、造船・海運に関する情報基盤整備を促進することにより、次世代の造船・関連産業の主導権確保の動きが出ている。

このような状況を考慮すると、我が国造船・舶用工業が生産性の向上と経営の効率化、就業構造の変化への対応を進める上で、高度情報化への取り組みはこれまで以上に加速する必要がある。従来の社内業務の効率化を中心としたCIM等の情報化の成果及び造船・舶用工業における情報化推進体制の整備を基礎として、業際業務の情報化を推進し、造船関連産業全体における企業間の情報の伝達効率及び処理効率の向上を図る必要がある。

 

2. 研究基盤の整備

タンカー事故の防止や温室効果ガスの抑制への期待等安全環境問題に対する国民意識の高まりを背景として、造船・海洋技術の高度化を進め、技術的突破によりこれらの社会ニーズに的確に対応することが求められている。また、高齢化、少子化による労働力不足に備えた生産技術の開発や、造船・舶用工業全般の技術力強化を図る観点からの中堅・中小企業の研究開発の活性化も図る必要がある。

これらの要請に対応するため、造船・海洋技術に関する新技術の創造体制を整備する必要がある。この体制整備に当たっては、行財政改革の進展による公的関与の縮減を踏まえ、民間能力のさらなる活用と関係する研究開発資源の集中による研究開発の効率化を図る必要がある。

 

3. 中小造船業及び関連舶用工業の対策

我が国の物流構造の変化、内航船の船腹過剰、内航船腹調整事業の解消に係る問題等により、内航船の建造需要が激減し、これを供給している中小造船業は深刻な不況に直面している。

 

 

 

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