(ア) 個々の企業の事業活動の活性化
生産設備の老朽化、システムの劣後化に対応するため、新生産方式の導入による生産効率の向上、新規分野への展開による需要の開拓等の事業革新及び継続的な投資を行っていけるような収益性の改善をめざした経営改革を進める必要がある。
(イ) 舶用機器の標準化及び企業間協力による生産体制の効率化
多品種少量生産の過剰な進行による仕様過多及び調達・生産ロットの小規模化が生産効率向上の阻害要因となっている。生産効率の向上を図るため、造船・海運業界等との協力による舶用機器の標準化、資機材の共同購入、生産協力等を促進する必要がある。
(2) 高度情報化の推進
設計・生産・調達・保守等企業・産業活動全体の高度化・効率化を図るため、造船、海運等関連する産業とも協力しつつ、業務の高度情報化を積極的に進める必要がある。その際、情報処理の効率を高める方向で、業務・取引形態の合理化・最適化を進めるために業界間で取引条件等を明確化、定型化する必要がある。
(3) 研究開発の活性化
企業活動のオリジナリティーを確保し、総合的な国際競争力を強化するため、造船・海運業界、異業種メーカー、大学、国立研究機関等と共同し、又は協力を得て研究開発を行うことにより研究資源を効率的に活用し、舶用工業全般の技術力の強化、特に中堅・中小企業の研究開発の活性化を図る必要がある。
また、海洋の開発・利用等今後発展が期待できる分野において新規需要を創出するために、先端的かつ基礎的な技術の研究開発も併せて進める必要がある。
(4) 国際化への対応
総合的な国際競争力、特にコスト面での競争力を確保するため、規格品の海外での生産や安価な資材、汎用部品の海外からの調達等、国際的な水平分業、工程間分業を進めることも検討する必要がある。その際、製品・部品の品質、安定供給体制の確保の観点から、技術協力その他の国際協力を行うことも重要である。
III. 国の果たす役割
我が国造船業、舶用工業を取り巻く環境変化に対応した前述の諸対策を進めていくに当たっては、事業者の自助努力を基本としつつ、国としても、以下のような役割を果たしていく必要がある。
これまでの造船対策は、造船業における長期不況の克服に重要な役割を果たすとともに、国際的な場において世界のリーディング・カントリーとしての責任を果たし、造船市場の秩序維持に貢献してきた。しかしながら、造船設備処理を含む厳しい造船設備規制を20年近い長期間にわたって縦続してきた結果、産業体制の硬直化、産業としての活力の低下というような弊害も無視できなくなっており、国際競争が激化する中で、状況変化に対応した造船設備規制の見直しが必要となっている。具体的には、国際競争力の向上と産業の活性化の促進を図るために、造船設備の新増設の際のスクラップ・アンド・ビルド、最大船型に関する規制等について見直す必要がある。なお、造船設備規制等の見直しの際には、造船市場の動向や中小企業に与える影響に配慮する必要がある。
魅力ある造船業へ向けた産業基盤の整備、舶用工業の活性化については、情報化・自動化の促進等に係る所要の環境整備を進めるとともに、情報技術の導入に関する指針の策定等適宜支援を行っていくことが必要である。
研究基盤の強化については、基礎研究や安全・環境分野での国の積極的な役割が期待されていることから、その研究能力の維持・向上に資するいわゆるセンター・オブ・エクセレンス(中核的研究拠点)構想、国立研究機関等の活用等を進める必要がある。また、我が国経済社会の発展、海洋利用の高度化、新たな需要創出等に資する高度船舶技術等の研究開発や研究開発成果の実用化等について支援を行っていくことが必要である。加えて、中小企業が行う研究開発等についても、適宜支援を行っていく必要がある。
国際協調については、国の果たす役割は重要であり、引き続きOECDや二国間協議等の場を通じ、造船市場の安定、造船協定の適切な運用の確保等に努めていく必要がある。