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(2) 円相場は、今後とも造船経営にとって不安定要因であり続けると考えられることから、為替変動に対しより柔軟に対応できる経営体制とする必要がある。

(3) 我が国造船業に従事する労働者の高齢化の進展、団塊世代の大量退職に備えた優秀な人材の確保等に対応するために、就労環境及び雇用条件の一層の改善を図る必要がある。

(4) 我が国造船業の中長期的な国際競争力の確保、産業のフロンティアの拡大を通じた産業の活力維持、安全・環境問題への貢献等のために、高度な技術力を保持する必要がある。

 

2. 魅力ある造船業へ向けた産業基盤の整備

我が国造船業が、前述の諸課題を解決していくためには、次世代造船業の構築、研究基盤の強化、需要の創出等魅力ある造船業へ向けた産業基盤の整備を推進する必要がある。

(1)次世代造船業の構築

我が国造船業は、最近10年間で高い生産性の向上を達成した。しかしながら、在来の手法と技術では、今後も引き続き、同レベルの高い生産性の向上を実現し、為替変動に対応しながら国際競争力を確保しつつ、適切な就労環境及び雇用条件を提供していくのは容易ではないと考えられる。

このため、以下の高度情報化技術等を活用した次世代造船業の構築を進める必要がある。

(ア) 自動化・情報技術の導入促進

1]CIMの着実な実現、自動化設備投資の促進等による生産の高度化の推進、2]CALS等情報技術の一層の活用による経営の合理化、効率化の推進、等を図り、経営全体として高度の生産性を達成できる技術力と経営体制の確立を目指すことが必要である。この場合、情報技術の導入に係る関係業界を含めた推進体制の整備を図る必要がある。

(イ) 生産体制の適正化

生産の集中化、船種・船型の専門化等を進めることにより、構造調整等の過程を通じて縮小した生産拠点が散在している現在の生産体制の適正化を図る必要がある。

(ウ) 事業提携の推進

今後とも、事業提携等による集約化を促進することにより経営資源の有効活用、資機材調達力の向上、投資の効率化等を図る必要がある。この際には、従来の手法の他に、情報技術を活用したバーチャル・コーポレーション等新たな集約の手法・形態の可能性にも十分配慮すべきである。

(2) 研究基盤の強化

将来の我が国造船業を支える重要な要素である技術力の向上、産業としての可能性の拡大、多様化する社会ニーズへの的確な対応等を図るための創造的技術ポテンシャルの向上が必要である。このため、研究資源の集約、共同研究の推進、産学官の研究組織の有機的連携の促進等によって研究基盤を強化する必要がある。

(3) 需要の創出

2000年以降は、新造船需要の減退と国際競争の激化が予想される。このため、新造船需要の変化に対応しつつ適正な操業を維持する見地から、在来の船舶需要とは異なる新たな需要の創出に積極的に取り組んでいく必要がある。

 

 

 

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