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資料2. 海運造船合理化審議会意見書「今後の造船業及び舶用工業のあり方について」(平成8年7月)

 

(はじめに)

平成3年の「21世紀を展望したこれからの造船対策のあり方について」の答申以降、我が国造船業及び舶用工業を取り巻く環境には以下のような変化が生じている。

(1) 競争環境の変化

造船業においては、韓国の大幅な設備拡張、中国等の造船市場への進出や各国の生産性の向上等により、世界の新造船供給能力が拡大傾向にある。今後の世界の新造船建造需要については、平成3年答申の見方と大差ないものと予測され、この結果、特に2000年以降においては国際競争が一段と激化するおそれがある。

他方、政府助成措置の廃止とダンピング防止を目的とする「商業的造船業における正常な競争条件に関する協定」(造船協定)が平成6年12月に合意され、造船市場においては公正な競争条件が国際的に確立されつつある。

舶用工業については、数量べースでの舶用機器需要は将来にわたって一定量存在するものの、舶用機器価格の低迷や欧州の我が国を含むアジア市場への進出の強化、韓国、中国による舶用機器生産能力の増強等により、厳しい状況に置かれている。

(2) 技術環境の変化

コンピューター関連技術の急速な進展やインターネット等の情報ネットワークの普及等情報インフラの整備が進んできている。これら高度情報化を軸とした新技術の導入等により、生産面・経営面での一層の効率化に向けた新しい可能性が出てきている。

(3) 経済社会環境の変化

バブル経済の崩壊、円高の進行等を背景とする産業の空洞化、規制緩和の進展及び日本型雇用慣行や就業構造の変化、安全・環境問題に対する意識の高まり等我が国経済社会環境が大きく変化してきている。

これらの環境変化は、我が国造船業及び舶用工業に大きな影響を及ぼすおそれがあるものであり、造船業及び舶用工業が今後とも健全な産業として我が国の経済社会の発展に寄与するとともに、地域経済への貢献、雇用機会の提供等の役割を引き続き担っていくためには、以下に述べる課題に適切に対応していく必要があると考える。

 

I. 我が国造船業の課題と対応

 

1. 我が国造船業の課題

我が国造船業が存在意義のある健全な「魅力ある造船業」として存立していくためには、以下のような課題に取り組んでいく必要がある。

(1) 世界的な新造船供給能力の拡大を背景として国際競争の激化が予想されており、我が国造船業は生産性の向上等により国際競争力の一層の向上を図る必要がある。

 

 

 

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