船腹調整制度を廃止して新しい内航海運へのジャンプを奨励したのであれば、着地点を明確にすることも必要な施策と考える。したがって、次のような検討が早期に着手されるべきである。
・ 今後の内航輸送システムのあり方、特にネットワーク化に対する研究の推進
・ 輪送品日ごとの輸送近代化(ネットワーク化、設備近代化等)の検討促進
・ 内航輸送のコモンキャリヤー化とその輸送システムの近代化
(2) 内航船の近代化、高度化を促進するための技術開発の奨励
今日の物流の要求していることと内航船技術の実現しえていることの間には無視しえない隔たりがある。たとえば、陸上に全天候型の施設がないところでは、ハッチカバーをあけると積み荷が濡れるという理由で雨が降ると船が停まる運命にある。内航の輸送品目が限られた原材料から広がるためには今日の物流の要求に応じる技術革新が必要になる。
冷えた内航造船市場で、新たな建造意欲を喚起する鍵は在来の船を陳腐化するような競争力を持った新造船の提案である。業界をあげて、近代化船を削減されたコストで実現する努力が必要になる。しかし、内航海運業者も造船所も小規模であるから、自力の開発は容易でないから、助成、奨励が必要になる。
・ 内航近代化のための技術開発に対する助成
・ 技術開発成果を普及するための優遇措置
(3) 内航船の海外移転の促進
船腹調整制度自体は一種の内航船腹の調整制度であるから、その廃止後の内航船需給調整についても考えておく必要がある。特に寿命の長い生産財の場合、需給調節の容易化は大切な視点となる。しかし、内航船が内航のみに限定された仕様であれば海外への売船は不可能になるから、スクラップ化する以外にない。しかし、人的コストの高い先進国では船齢よりも省力仕様の方が重要であるなど、国の経済的環境の違いで良い船のあり方も違うという点への注意も必要になろう。こうした意味で、内航船というより、中近距離輸送の小型船として考え、この小型船資源の有効活用を促進するという視点を得る。また、海外では港湾の条件などに規定され、日本とは異なった仕様が必要になったり、修繕能力の不足のために日本船の複雑な機関室のメンテナンスが難しいなど、小型船の国際流通にはここの船主では解決できない問題も多いが、余剰船腹の海外移転は内航問題の前進に寄与する筈である。このためには以下のような検討が望まれる。
・ 国際的に活用できる小型船舶仕様のあり方の検討
・ 海外移転促進のための総合施策
修繕設備、能力の移転
市場の違いを考慮した改造技術の開発
・ アジアの輸送システムに対する小型船資源活用の可能性調査
(市場規模の把握、海域による構造設備の評価など)
・ 移転促進のための融通制度と国際協力